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若い頃、ダイエットの風潮に反発していた。
父親が太め好みであることに便乗して、
「女性は少しくらいぽっちゃりしていた方が魅力的なのよ」
と開き直っていた。
しかし、20代も後半になるとぽっちゃりを超え、29才時にはいつのまにか身長156cm、体重68kg、、BMI27.9の立派な肥満になっていた。
このBMIとは聞いたことがある人も多いと思うが、Body Mass Indexの略で、身長と体重から求める国際的な体格の判定方法(計算方法)なのである。
BMI=体重(kg)÷身長(m)の二乗、もっと簡単にBMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められる。
統計に寄れば、BMI22の人が一番死亡率が低いので理想体重と呼ばれ、25以上は肥満、18以下は痩せすぎとみなされる。
当時同棲していた現在の夫は、
「太りすぎると関節を痛めるよ、減量したらー」
と言ったが、聞き流していた。
ところが、実に数ヶ月後、夫の言う通りになっていたのである。
ある日急に左足股関節が痛くなった。感覚的には脱臼したような感じであり、駅からタクシー乗り場までですら歩けなくなったのである。
「もしかしたら○○のしすぎで(JunkStageの品位を落としてごめんなさい)、脱臼したのかもー」
とすら思った。
私は医者志望の癖に医者嫌いであったが、さすがに仕方なく整形外科に行った。
何人もの医者が集まり
「これは将来人工関節だねえ」
と冷たい口調で言った。
「どうすればいいのですか?」
と言うと、さも面倒そうに
「まずは減量、後は筋肉を付ける!」
「どのように?」
と言うと、再び面倒そうに、横転して足を太ももよりまっすぐ伸ばし、上げ下げする運動を紹介した。
「とりあえず、炎症止めを出しておくから、後は進行しているかどうか年に1、2度チェックね。」
とぶっきらぼうに言う。
模擬診療面接にて、最悪例に出されそうな物言いであった。
この件があって、ますます医者嫌いになったのは言うまでもなかった。
私は先天性股関節脱臼の影響で、股関節変症という関節が変形して軟骨がすり減る病気にかかっていたのだった。
人工関節も嫌だったが、まず歩けないにのは困った。
それ以前に夫が私にダイエットを勧めて、女子栄養大学出版のカロリー表を買ってあったのだった。
せっぱ詰まった私は、マイクロダイエットやリンゴダイエットのような安易な方法に頼らずに、地道にカロリー計算して痩せることにした。
が、いちいち計量してカロリー計算するのは不精者の私には向かない。
夫が買ってきたカロリーブックは、日常の食品材料や、できあがり品の写真が載っていて、カロリーと共に、80Kcal(約卵1個分)を一点とした点数も乗っていた。軽労働で男性25点内、女性20点以内に抑えるダイエットを推奨していて、女性で言えば、第一群(乳製品・卵)3点、第2群肉・魚製品3点、第3群野菜・芋・果物3点、第4群穀物を11点取ることを推奨していた。
詳しくは下記URLを参照のこと。
http://www.n-dricom.co.jp/dnk/04_zadan/zadan19/04_12_zadan.html
私は、そこまできちんとは献立を考えたわけではないが、適度なバランスを考えた上で、目分量で点数計算をし、1日20点以内(1600Kcal以内)に抑えることにした。
ときどきは、餃子3人前とか、チョコレートを何粒も食べたりしたが、ほとんどの日で20点以内に抑えていた。カロリーブックを見ることによって、意外なものが高カロリーだと知った。
例えばカレールー、ほんのひとかけらで一点なのである。(よって、材料を炒めず、野菜だけのカレーにしてさえ、相当のカロリーになる。ましてや普通の作り方をしたカレーはダイエット中は禁忌である。)せんべいも高カロリー、ちょっと2,3枚ぱくぱく食べたら朝食1食分になってしまう。
そういう高カロリー食をできるだけ避け、自炊を続けることによって面白いように体重が落ち、何と3ヶ月で、68kg→58Kg、何と10kgも減量できたのである。
減量の甲斐あって、15分くらいの連続歩行が可能になった。体が軽くなったなあ、というのが実感で、それまで履いていたジーンズがぶかぶかになり、買い直さなければならなっかった。
ところで、私は6月の第2週から今日まで糖尿病・内分泌・代謝内科で研修医生活をしていた。糖尿病は、インスリンという血糖を細胞に取り込むために必要なホルモンが働きにくくなって、血糖が高くなる病気だ。このインスリン、膵臓のβ細胞から分泌されるのだが、抗体などによってインスリン分泌そのものが少なくなる1型糖尿病とインスリンは分泌されるのだが、インスリンが働きにくくなって血糖が高くなる2型糖尿病がある。
2型糖尿病の原因の多くは過食による肥満であり、それに体質的要素が加わって(だから1型糖尿病ではなく、2型糖尿病の方に遺伝性が強い)発症する。贅沢病とも言われ、いわば自業自得の病気でもある。
ところが、この2型糖尿病の方は、危機に至っても(糖尿病は進行すると腎障害や網膜症、足の壊疽など恐ろしい合併症を起こす)、自分の生活習慣を改めようとせず過食を続けたり、キャベツダイエット、バナナダイエットなど短絡的なダイエットに走りがちな人が多い。(だから病気になったとも言える)
私の持ち患者さんの一人は、ついに
「先生、脂肪吸引術を受けるのはどうかしら」
と言い出した。
「えっ、そんなー。脂肪塞栓(脂肪が血管に入り、血管が詰まる病気)になって亡くなった方もいるのですよ。それに、うまくいっても皮下脂肪は減るかもしれないけれど、脂肪肝は改善されないので(脂肪肝がインスリンが効きにくくなる原因の一つになる。)、糖尿病はよくなりませんよ。やはり、こつこつバランスのよい食事で減量するのが一番の近道ですよ。」
と説明した。
私は、股関節変形症のために減量した記録を日記に書いていたことを思い出した。
そしてこの患者さんのために、その部分をコピーしたのであった。その日記には、食べたものと点数、そして換算カロリーを簡単に書いていたのだった。自分一人では続かないので、夫に見てもらい、印鑑を押してもらったのだった。
ところで、その日記にはダイエット記録だけではなく、もちろん普通の日記分も書いてあったので、その部分は切り取って渡したのだが、1987.1.8の日記を見てはっとした。
日記の一部をここに写す。
「僕とずっといてくれますか」
「うん」
何か気持ちがすっとするものを感じた。
こんな日があったのだ。
引き締まる思いだった。










