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2016/09/04
えー、少し間が空いてしまいました。お待たせしてしまった皆様、たいへん申し訳ありません。あ、待ってない?
ちょっといろいろありまして(悪いことではありませんが、いいことでもありません)、しばらく書くことができませんでした。
その間も、ただ漫然と休んでいたのではありません! プロレスは3回ばかり生観戦に行きましたし、WWEの番組は毎週5時間欠かさず見て、PPVもすべて見ておりました。
観戦して思ったこと考えたことを全部書いていたらきりがありませんので、今回は「プロレス技の謎」について考察してみようかなと、思ったりなんかしました。
念のために書いておきますが、謎は完全には解けておりません。そんなに底の浅いものではありませんでしたよ、案の定。

かけた方が痛い技

RKOというプロレス技があります。
ランディ・オートンという、祖父の代からプロレスラーという家系のレスラーの技です。
「相手に背を向けつつ首を抱え、ジャンプして……」とか書いてもわからないでしょうから、動画をご覧ください。

本名のランダル・キース・オートンのイニシャルと“KO”をかけたネーミングが秀逸なこの技、どこが素晴らしいかを言い出したらキリがないくらい素晴らしい技です。
無理矢理まとめると、オートンのセンスの良さで、思いもよらないタイミングで突然繰り出して観客を驚かせ、試合を一気に終わらせる、当代でも出色のフィニッシャー(決め技)と言えるでしょう。
さて、この技を初めてご覧になった方、そこはかとない違和感を感じませんか?
大学生の頃までプロレスごっこをやめられなかった私のような人間にとって、プロレス技を見ると、つい“自分でかける場合”“かけられる場合”を脳内でシミュレーションするのは、「布団に入ったら寝る」「とりあえずビール」と同レベルのルーティンなのですが、この技を脳内シミュレーションしてみると……
「RKOの実際のダメージは、やられる方よりも、技をかける方が大きいのではないか」
としか思えないのです。
もちろん、プロレスラーの受け身の技術は非常に高度ですので、背中からマットに落ちるダメージは、見た目ほどではないでしょう。リングも多少は衝撃を吸収する(※)ようにはなっています。
※学生時代、リング屋さんのアルバイトを経験したので、リングの構造はよ〜く知ってます。あれはレスラーにしか機能しません。素人の場合、あんなの板の間同然です。
それでも、相手の胸の高さくらいまでジャンプして、背中から落ちるわけですよ。痛いでしょ、普通。
一方、相手はぶっちゃけ手をマットにつけるし、顔はオートンの肩の上です。余程のことがなければ、ちょっとすっ転んだくらいのダメージのはずです。実際には。
しかしそれでも、RKOはプロレス技としてとてつもなく素晴らしいのです。無理矢理こじつけたわけではなく、実際の観客がドッカンドッカン湧くのを見れば明白です。
さて、なぜそういうことが起きるのか。
段階を踏んで考察したりなんかしようと思います。

ダメージと説得力の関係

 かつてプロレス技に求められたのは、“本当にかかった時のダメージ”だったのではないか思われます。
プロレス技の多くは、かける方とかけられる方の呼吸が合うことで成立しますが、もしも本当にかかった場合や受身をちゃんと取れなかった場合、物凄いダメージになるものでした。
プロレスごっこ経験者ならおわかりのように、ヘッドロックでさえ本当に締めると頭が割れそうに痛みます。
ブレーンバスターを食らうと何秒か呼吸できませんし、4の字固めは脚が折れるんじゃないかと思います。
バックドロップなんか食らった日には、生命の危険さえあります。
痛くなさそうなコブラツイストでさえ、ちゃんとかけるとメッチャ痛いんです。元祖ディック・ハットンやダニー・ホッジの写真を見ながら研究しました。
少なくとも、エンターテインメント宣言する前のプロレス技は、基本的に「かかった時のダメージは大きいもの」だったのです。
アメリカでも、“決まればダメージがでかい”という基本線は同じでした。
ハルク・ホーガンのレッグドロップ(日本で言うギロチンドロップ。アックス・ボンバーは日本向けの技です)、リック・フレアーの4の字固め、ランディ・サベージのエルボー・ドロップ……みんな、ガッツリ決まれば死ぬほど痛いです。
そして、決め技ではない技に比べると、とても効きそうに見える技が決め技となっていました。

プロレスの決め技の本質をさらけ出す、革命的な技

 ところが、ある技が、状況を一変させたのです。
いや、正確にはわからないし、何の検証もしていませんが、私の中ではそうなんです。
この技は、ダメージ追求から呆気なく離れたばかりか、それによってプロレスの決め技の本質をむき出しにしたと考えています。
その技とは、ピープルズ・エルボー、という技です。
ザ・ロック、今やハリウッドのトップ俳優の一人、ドゥエイン・ジョンソンの技でした。
まあ、こちらをご覧ください。

 とても装飾されたエルボー・ドロップです。
で、この技は、あらゆる説明を拒否する、ひたすらかっこよさだけを追求した技なのですよ、これが。
名前も、ピープルズ・チャンピオンの技だからピープルズ・エルボー!
※悪役転向して会社側の手先になった時は“コーポレイト・エルボー”に名称変更!
エルボー・ドロップは、ダウンした相手にジャンプして肘を落とす技です。
ということは、重さとスピードで、威力は決まってしまいます。強いて言えば、肘の骨の硬さとか、当たるところの面積とかもあるでしょうが、基本はでかい人がやった方が効くんです。
でかい人でなくても、スピードがあれば威力は増します。
そのくらいのことは、物理の成績が極悪だった私でもわかるんですよ。
でもこの技は、ロープに走って勢いをつけてはいますが、当てる時に止まっちゃうわけですから、率直に言って走ることに何の意味もありません。
サポーターを外して客席に投げ入れる、相手の両腕を蹴る、ポーズを取る、ロープに走る、止まる、肘を落とす。この一連の流れこそがピープルズ・エルボーという技であり、単なるエルボー・ドロップとは異なる点なのです。
恐らく、これを見て「凄い威力だ!」と思う人は、子供も含めて1人もいないと思います。
が、見ていて楽しいではありませんか。
ロック様はカッコイイではありませんか。
何となく真似をしたくなるではありませんか。
むやみに盛り上がるし、カウント3つ入った時にカタルシスがあるではありませんか。
であれば、これぞプロレス技!なのです。
ピープルズ・エルボーという技が認知された時期は、公式にWWEがプロレスがエンターテインメントであると表明した時期に(おおむね)一致します。
その後から、決め技は必ずしもダメージを追求しなくなっていったと記憶しています。私の中では。
恐らくどんなにガッツリ決めても(レスラーには)効かない技、得意技の中では比較的ダメージが少ないけどカッコイイ技、そして、冒頭のRKOのように、かける方が痛い技。
こういう技が増えてきます。
でも、何の問題もないですし、むしろそれこそが、プロレスというものの特異性を引き立たせるのです。

プロレスの決め技には何が必要なのか?

プロレスの決め技に必要なものとは、いったい何なのか?
威力でもない。いかにも痛そうな説得力でもない。
カッコイイ技ならたくさんありますし、決まった時の綺麗さなんて、決め技以外でもあるものはあります。決め技よりもカッコイイつなぎ技なんてのも、珍しくありません。
では、何なのか?
それは、“これが出たら試合が終わり”という雰囲気があるかどうか、ではないかと思うのです。
雑駁な言い方ですが、記号としての機能の強さというか。
この技が決まったら、普通なら試合は終わる、ということが観客に伝わるかどうか。これこそが、プロレスの決め技に必要なことなのだと思います。
見得の切り方や出す時の表情なのか。いや、何の前触れもなく、突然出る技もあります。
受けた相手の反応なのか。いや、つなぎ技でも、ものすごいダメージを演じるレスラーも多いです。
様々な理由はあると思いますが、すぐれた決め技は、出ると「これで決まった!」ということが、見ていてわかるのです。
結局、ここで考察はおしまい。というのは、なぜ「決まった!」とわかるのかが、説明できないんですよ。何らかの“特別感”があるということくらいしか。
そして、それを伝えられるのは、やはり上手いレスラーであり、すぐれた決め技なのです。
プロレスの技というのは、しみじみ考えると非常に面白いものです。
人間が、あんな形でぶつかりあうという場面自体、プロレス以外では見ることができません。
技をかける方とかけられる方の呼吸がピッタリ合った時の、えも言われぬ様式美というのは、ガチンコの競技では滅多に見られないものです。
フィニッシュ・ホールド(現代アメリカ式の言い方だとフィニッシャー)がバッチリ決まり、1、2、3とカウントが入った瞬間のカタルシスも、他では味わえない気持ちの良さがあります。
 あなたもぜひ、機会があったら“決め技”に注目してみてください。
むずかしく考える必要はありません。見てればわかります。
すぐれたレスラーは、ここで試合が終わるぞ、と伝えることができるのです。
そして、その裏をかいて試合が続いたりすると、これまたものすごい盛り上がりにつながるんですが、それはまた次の機会に!
2016/09/04 05:44 | 見方 | No Comments

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