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2017/11/21

和製英語だらけのプロレス技

和製英語、よくありますよね。ナイター(英語ではnight game)とかガソリンスタンド(英語ではgas station)とか。
さらに、テンションとかセレブリティとか、英語と微妙に意味合いが異なる使われ方をしている言葉を入れると、私たちはかなりの和製英語を使っています。

意外なことに、アメリカのエンターテインメントをまんま輸入したはずのプロレスでも、実は非常に多くの和製英語が氾濫しているのです。
日本でも、プロレス技の名前はほとんど英語ではあるのですが、実はけっこうな割合で、英語ではなくカタカナ語だったりするんですよ、これが。

ラリアット


スタン・ハンセンが創始者のこの技、今ではプロレスの代表的な技のひとつで、世界中どこでも、1興行で最低1回は出てくる技です。
が、アメリカでは基本「lariat」とは言いません。「clothesline」が一般的な名称なんですよ、実は。

直訳は「物干しロープ」で、物干しロープに首を引っ掛けて転んでしまうことが由来とのことです。
ちなみに、スタン・ハンセンはアメリカではスタン・“ザ・ラリアット”・ハンセンなので、元はニックネームなんですかね。
なおここ数年は、日本のプロレスに詳しいアナウンサーが敢えて「lariat」と呼んだり、わざと日本語発音で「rariattoooooooo!!」とか言ったりしますが、マニア受けを狙っただけだと思われ、一般名詞としてはあくまでclotheslineなのです。

スープレックス


プロレスの神様カール・ゴッチ曰く「スープレックスと呼んでいいのはジャーマン・スープレックスだけ」だそうですが、実況を聞いている限り、自分が後ろに倒れながら頭越しに投げる技は、全部「suplex」と呼ばれています。

たとえばバックドロップは「back suplex」、

ブレーンバスターは「vertical suplex」、

フロント・スープレックスは「belly to belly suplex」、

サイド・スープレックスは「gutwrench suplex」


ですが、そんな区別をしないで単にsuplexと言われる場合がほとんどです。
(Wikipedia風に言うと“独自研究”ですが)下図Aのような投げ方をする技がsuplex、Bのような投げ方をする技がdrop、と言われているようです。

図A

図B

ロック様の「Samoan Drop」ですね。
サモア系のレスラーしか使わない技です。サモア人はムチャクチャ強いので、おそらく他の人種が使うと殺されるのでしょう。

なお、日本では“雪崩式”と言われる、トップロープからの投げ技は、「superplex」と言います。

 

コブラツイスト


ディック・ハットンが開発し、日本ではあのアントニオ猪木が使い手だったこの技、これも和製英語で、アメリカでは「abdominal stretch」と言います。
確かに、「cobra twist」と書いてみると、何となく珍妙な気がします。用法的にはどうかわかりませんが、少なくともプロレス技の英語名としてはおかしいような……

ローリング・クラッチ・ホールド


日本語で回転エビ固めということが多いとは思いますが、上記の横文字も使われます。
が、アメリカで「rolling clutch hold」と言っているのを聞いたことがありません。
何と「sunset flip」と言うんですよ。

古くからのファンにとっては、サンセット・フリップと言えば、マイティ井上が前宙して背中から相手の上に落ちる技が浮かぶと思いますが、それは「senton」。日本では「セントーン」と言うとジャンプして素直に背中から相手の上に落ちる技のことですが、アメリカではケツから相手の上から落ちる技は、みんな「senton」です。
※スペイン語「sentón」が元で、「尻餅」のことみたいです。

ショルダー・スルー

プロレスならではの技で、走ってくる相手を空中に跳ね上げ、後ろに落とす技です。
これを食らった時のリック・フレアーのリアクションが素晴らしいのですが、それはまた別の機会に。

これは「back body drop」と言います。「後ろ身体落とし」何のひねりもありませんね。

エルボースマッシュ


左手で相手の首を取り、下から回した右腕で相手の顎をカチ上げるこの技、ドリー・ファンク・ジュニアなんかが得意にしていました。
これがなぜか「European uppercut」。ヨーロッパのレスラーがよく使ってたからだそうです。

フライング・ボディ・シザース・ドロップ


走って正面から飛び上がって、脚で相手の胴を挟み込み、そのまま押し潰す技です。
これが何と「Lou Thesz press」。ルー・テーズさんがオリジナルなんですね。

各種キック

キック全般はもちろんkickですが、日本とはその中身が異なります。

boot


こういう正面から蹴るキックは、bootと言います。
ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンのファンの皆様は「bootleg」(非公式な音源から作られる海賊盤)の略語を連想する向きもあるかもしれませんが、無関係です。

super kick


何がスーパーなのかはわかりませんが。
いわゆる後ろ蹴りです。日本ではトラース・キックなんて言いますが、英語にはそれに該当する言葉がなく、語源不明だそうです。

heel kick


こうした飛び後ろ回し蹴りを日本ではニール・キックと呼びますが、恐らく最初に訳した人が読み間違えたのではないかと。
聞いて間違えるとは思えませんが、「n」と「h」は、字が下手な人が書くと似てますしね。

sharp shooter


滑舌の悪さで有名な長州力の得意技サソリ固めのことです。

ただし、シャープ・シューターの方が一般的になったのには変わった経緯があります。
元々は、WCW(WWEと真っ向勝負した唯一のガチ競合)のトップスターだったスティング(notミュージシャン)が、サソリ固めを英訳した「scorpion death lock」として使っていました。

同じ技をWWEのブレット・ハートも使ったのですが、差別化のためかシャープ・シューターと名前を変更。他のレスラーが使っても、WWEではあくまでシャープ・シューターという名称を貫きました。その後、WCWはWWEに買収されてしまったので、名前もシャープ・シューターしか残らなかった、というわけです。

スティングが後にWWEのリングに上がった時は「scorpion death lock」を使用しましたが、その頃には一般名称が「シャープ…」で、スティング用の特殊な名前が「スコーピオン…」という状態になっていたのです。
なお、WWEは公式に動画を制作し、「sharp shooterの本家は、長州力のscorpion death lockだ」と認めています

というわけで、プロレス英語の道は奥が深いのであります。

2017/10/31

ご無沙汰してしまいました。
変にまとまった投稿をしようとするあまり、実は書きかけばかり何本も溜まっている状態です。
面目ありません。そんな期待もされてないか。

それでも、間隔が空いてしまうのはよくない気がしてきたので、ちょっと1本あたりは短くても投稿しようかなと。
今回はその第1弾です。
えー、今後、必ず更新頻度が上がることを保証するものではありません。

 

さて、プロレスに詳しくない人でも、「技をかけるという言い方は、普通にご存知でしょう。
そう、「技」は「かける」ものなんです。

で、この「かける」、英語で何というかご存知ですか?

伝統的には、「apply」なんですよ、これが。
他動詞だと、「応用する」「当てはめる」「一生懸命やる」「(薬を)塗る」「用いる」……と、広い範囲をカバーする言葉です。
日本語の「かける」も、たいがい範囲が広い言葉ですが、「apply」も負けてません。

エド・“ストラングラー”・ルイスの古い技術書なんかにも、「Applying wrist lock」なんてキャプションがついてました。

で、WWEの番組を見ていると、「deliver」も使われていることがわかります。
「Delivered Styles Clash to Kevin Owens!!」という感じで。
辞書を引くと、「届ける」「配達する」「提供する」「達成する」……とある中で、「(打撃などを)与える」という意味もあるようです。

ニュアンスとしては、「apply」が「かける」、「deliver」が「くらわせる」ってところでしょうかね? 知らんけど。

そして、いつの頃からは判然としませんが、短い技の名前の場合、まんま技名が動詞として使われるのも、よく聞くようになりました。

「RKOをかけた」が「RKOed」とか、「彼にペディグリーをかける」が「Pedigree him」とか。

「検索しろ」が「Google it」になるのと同じなんでしょうが、日本語でも「ググる」になるくらい一般的ならわかるんですが、こういう特定業界だけの名詞も、動詞になったりするんですね。

こんなん書いてきて、英語できる人にとっては当たり前だったら恥ずかしいけど、生まれてこのかた日本人で、日本語ネイティブ極まりないオジサンの、キュートな努力をほほえましく見守ってください、

2017/04/27

「イノキ! イノキ!」という“猪木コール”は、プロレスに興味のない方もご存知でしょう。
応援するレスラーの名前を連呼するのは、洋の東西を問わず定番の応援で、どの国でも見られる形です。

日本の“コール”に対して、英語(アメリカだけ?)は“チャント”と言います。

chant
 1 〈人が〉〈スローガンなど〉を一斉に唱える, 同じ調子で繰り返す, シュプレヒコールする;
 2 …を歌う; 〈聖歌〉を詠唱する; 〈お経など〉を唱える; (歌で)…を賛美する
 ※Macのプリインストール辞書より

という言葉を使うところからもわかるように、アメリカのチャントは必ずしも個人名の連呼ではありません(詳細はこちらをご参照ください)が、今回はあくまで“レスラーの名前を連呼する応援”に絞ってお話しして参ります。

 

日本の“コール”は必ず“4拍子四分休符終わり

冒頭のイノキコールを、ちょっとリズム譜にしてみましょう。

イノキコール

このように、四分音符3つで四分休符で終わります。
3音の「イノキ」は、こうして4拍子になるわけですが、では、音数が異なるレスラーはどうなるのか。

例えば、猪木の終生のライバル、ジャイアント馬場さん。音数は2つです。
この場合、
馬場コール
のように、頭が二分音符になり、終わりはあくまで四分休符です。

では4音の場合。新日本プロレス復興の立役者、棚橋弘至は……
棚橋コール
という感じで、2拍目が三連のリズムで2つに分かれるのです。

5音の場合……誰かいたかな? 思いつかないので、適当に。
“勅使河原”さんへのコールは、こうなります。

前半の拍を分解するわけですな。

佐村河内さんみたいな6音の人はどうなるのか……例がパッと浮かばないので、実験のため、誰かあの人をプロレス転向させてください。

そして、外国人レスラーの場合。
日本のファンは、あくまでカタカナ表記を上記の法則に当てはめてコールします。
ハルク・ホーガンの場合、
ホーガンコール
こうなります。
「ホーガン」という音は「Hogan」の発音と近いのでさほど問題はないのですが、例えば故ブルーザー・ブロディなんかだと、

となります。でも、「Brody」という名前は「Bro」と「dy」の2音節なので、「Bu」「ro」「di」と発音される「ブロディコール」は、誰かに教わるまで自分のことだとわからなかったんじゃないかな……

PAC(2017/4/26現在のWWEクルーザー級王者ネヴィル)もそうですね。

おわかりのように「PAC」で1音節ですから、「PA」「K」「KU」とか言われても、何のこっちゃ?だったのではないかと。

とにかく、日本の“コール”の場合、100%四分休符終わりなのです!

 

アメリカのチャントのバリエーション

暗黙のうちに確立したルールに従う日本のコールと違い、アメリカのチャントはある程度の法則がありつつ、チャランポランな感じです。
たとえば、前項に出たハルク・ホーガンは
Hogan chant
このように、2拍子で休符なしです。

サモア・ジョーの場合、Joeは1音節なので、2拍子休符あり。
Samoa Joe chant

日本式と同じリズムのチャントもあります。CMパンクがそのパターンです。
CM Punk chant
クリス・ジェリコも同じリズムですが、彼の場合はニックネームである「Y2J」の連呼です。
Y2J chant

そして、日本にはないパターンとして、1小節でチャントして、1小節で手拍子するパターンがあります。

名前が短い場合、ジョン・シナの応援「Let’s go Cena」のように、Let’s goがつく場合も多いです。
Let's go Cena
が、シナはコアな男性ファンに嫌われる傾向がありますので、実際にはほとんどこうなります
Let's go Cena, Cena sucks

で、この手拍子1小節パターンは、なぜか2音階のメロディがつくケースもあります。
アンダーテイカーや
undertaker chant
ダニエル・ブライアンが典型例です。
Daniel Bryan chant
中邑真輔へのチャントもまさにこれ。
nakamura chant
「This is awesome」(こりゃすごい)なんてチャントをする際も、たいていこのメロディです。
this is awesome

最後に特殊なケースのご紹介です。
人気タッグチーム「New Day」の場合、モータウンのベードラみたいなリズムで「New Day rocks」と連呼します。悪役の頃は「New Day sucks」でしたけど。
New Day rocks

そして、デビュー以来無敗の日本の誇り、無敵のNXT女子王者アスカ! 最初の登場で、誰かが歌い出した3音階メロディが全米に波及しています。
Asuka's gonna kill you
Asuka’s gonna kill you
凄いですよね。「アスカはお前を殺すよ〜♩」ですから!

というわけで、プロレスをご覧になる際には客席の声にも耳を傾けると、ひときわ楽しめますぜ。

2016/03/31

WWEの番組は、J sportsの日本語字幕版(10日後くらいに放送)にしても、WWEネットワークで見られる番組にせよ、番組中に聞こえてくる言葉は基本オール英語です。

※レッスルマニア32は日本語実況もあります。

私自身は、推定2歳児レベルの英会話力しかないので、WWEネットワークを見る時には、基本的に英語字幕をオンにして、それでも時々一時停止して辞書を引くレベルです。

※英語の字幕はあるので、“読めるけど聞こえない”あなたも安心ですよ。

そんなレベルの私でも、

  • 日本のプロレス的な和製英語と違う言葉
  • 一般的な言葉だけど、プロレス的文脈では意味が異なる言葉
  • ビジネス会話ではまず出てきそうにない言葉

がいくつかあることに気づきます。

このシリーズでは、そんな言葉をプロレス的“出る単として少しずつご紹介したいと思います(出る単だって。トシがバレバレですね)。
まあ、レッスルマニア32も近いし、いいタイミングなのではないかと!

ただし、英語力2歳児なので少しずつのご紹介となりますが、ご容赦いただければ幸いです。10年前は犬と同じくらいだったので、これでも進歩しているのです。
あ、なお、日本語でも音訳された同じ言葉(例:top rope→トップロープ)の場合は取り上げません。

基本用語

まず、日本人が番組を楽しむ上で、押さえておくべき言葉から紹介して参りましょう。

tag

タッグマッチで、リング内のレスラーがコーナーに待機する相棒と手をパチンと合わせて交代するシーンは、プロレスに縁のない方でも一度は見たことがあるでしょう。
あれ、日本では「タッチ」と言いますが、あちらでは「tag」と言います。「trying to tag」とか「Tagged!!」とか「Make a tag」とかいう形で使われてます。

promo

日本でいう“マイクアピール”は、あちらでは“promo”といいます。“宣伝”の意味のようですね。何というか、素直な用語ですね。

chant

「イノキ!イノキ!」という“猪木コール”はご存知だと思います。ああいうのを日本では“コール”と言いますが、英語だと“chant”です。
当たり前っちゃ当たり前なんですが、リズムの取り方も違ってます。
たとえばホーガンに声援を送る時、日本では「ホ・ー・ガン!(4分休符)ホ・ー・ガン!(4分休符)」となりますが、あちらでは「ホー・ガン!ホー・ガン!」と連続します。
レスラーの名前を呼ぶ以外にも、さまざまなチャントがあります。
例えば……

You suck!

悪役に対するチャントです。「おまえ最低!」の意味です。J Sportsの字幕では「最低野郎!」と当てられていますが、カート・アングルだけ「へなちょこ!」という表記です。何でだ。

This is awesome!

主にリングの上で秀逸な攻防が披露された場合に、称賛のチャントが発生します。
直訳すると「これはすごい」ですが、J Sportsの字幕では「これぞ名勝負!」「これぞ名場面!」など、状況に応じて字幕が当てられます。意訳しすぎの気もしますが。

Holy shit!

打って変わって、主に凶器や備品を使って凄いことをやっちゃった時——例えば相手を実況席(なぜか基本的にスペイン語実況席)に叩きつけて破壊したり、2mクラスのハシゴからダイブして攻撃したりと、“エクストリーム”な攻防が凄かった時に起きる称賛チャントです。
直訳すると「聖なるクソ」ですが、字幕では「クソすげえ!」となかなか趣のある訳し方です。

Let’s go xxxx

試合中に(主に)ベビーフェイス(善玉レスラー)を応援する時、単なる連呼では語呂が悪いような場合にLet’s goが付きます。一度チャントしてから、手拍子を“チャッチャッチャチャチャ”と入れるのが通常です。

Let’s go Cena! Cena sucks!

で、ジョン・シナという当代ナンバー1人気のレスラー(何でも年間13億稼ぐとか)は子供と女性に応援され、モテない感じの若い男性に嫌われています。
なので、上記のチャントの前半が黄色い声で、後半が野太い声になります。
会場では「Cena sucks!」と叫ぶ男を子供のファンが睨みつける場面もよく見られ、なかなか楽しめます。なお「Cena sucks」は前述の「You suck」と同意ですが、三人称単数なので「s」が付きます(蛇足)。

ロック様用語

レッスルマニア32では、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンの出番があるそうです。
彼のpromoは最低10分以上カンペなしでしゃべるのが当たり前なのですが、スラングを多用する上に造語を使います。
英語に堪能な方だと却ってわからない言葉があると思うので、ご紹介しましょう。上から目線ですが。

jabroni

元々は、プロレス業界の隠語だとのこと。ロック自身が「この隠語を堂々と番組で使ったのは俺が初めてだ」と語っています。
負け役を演じることをjobといい、負け役ばっかりのレスラーをjobberというのからイタリア語風(?)に転訛した言葉で、“ダメな奴”的な意味のようです。

smackdown

“お仕置き”の意味で、「lay the smackdown hotel!」という用法がもっとも多いです。
これはロックの造語で、その後番組名に採用され、今では辞書にも収録されるようになったという言葉なのです。

arse

assが放送禁止のようなので、代わりに使われる言葉です。
ロックだけが使う言葉ではありませんが、使用頻度は恐らく彼が一番です。

まだまだプロレス的な文脈で出てくる独自の英語はたくさんあります。
が、あんまり一気に紹介しちゃうとネタが切れてしまうので、このへんで。