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2013/03/28

春分を過ぎました、 田畑では麦の緑が眼にも鮮やか。梅の花が散り始め、木瓜が咲きました。桃の花ももうすぐ開きそう。 間もなく桜の季節、春爛漫を迎えつつある谷間より、久しぶりのご挨拶です。

ご無沙汰しておりました。百姓を目指して丸五年を過ごそうとしています。 川口巽次郎です。

昨秋にお迎えしたJunkstageの皆さんとの想い出も最早、春霞のかなたに朧に浮かぶばかり。 でも、しつこく書かせて頂きます。

yuuさんが書いて下さっていましたが、皆さん、夕食の準備が終わった頃には将に「疲れ切って」いました。 直接の原因は、以下の3つです。

1) お米の籾摺り

この件については、既に先回書かせて頂きました。改めてYuuさんから頂いた写真をアップしておきました。しつこいですが、とても現代日本の光景だとは想えません(笑) ぜひご覧ください。

2) お魚の調理

最初のお買い物編で当日仕入れた魚についてはご紹介しました。が、この仕込み、大変に手間のかかるものなのですね。

そして、

3) 竈の火の番

当日の夜ご飯のメイン料理は、蟹と鶏でしたが、この2品は共に庭の竈で皆さんに火の番をして調理して頂きました。いまどき、キャンプでも無いのに、もしくは、キャンプであったとしても、野外で薪炊きで調理をする、というのは珍しいですよね。

という事で、今日はお魚について。

こちらでご紹介した通り、仕入れた魚は全て海から揚がったままの状態、というか、殆どが調理する時まで活きてます。 都会の魚屋さんの店頭や、スーパーの鮮魚売り場でパックされて並んでいる魚たちとは全くの別物なのです。

当然ながら、鱗もついているし、鰓も内臓もついている。

勿論、そんな素材だからこそ美味しく頂けるのですが、実は、瀬戸内の魚には大きな特徴があります。

それは、大きくない、というか、小さい!という事です。

当日のメニューからお魚料理を振り返ってみましょう。

1) お刺身(サヨリ、コチ、カレイ、スズキ、チヌ) 2) ネブトと小蝦の唐揚げ: 3) 小蝦と南瓜のサラダ: 4) 釜茹で渡り蟹:

4) の蟹については下拵えは要りません。釜で茹でる。以上です。

が、他のものは結構手間が懸るのです。

先ず、2) のネブトと小蝦。

ネブトの正式名は、「テンジクダイ」。岡山県東部では「イシモチ」とも呼ばれる小魚です。(関東でイシモチと呼ばれる魚ははるか大型の別物、瀬戸内ではグチと呼ばれます。)実は沖縄の珊瑚礁で無数に群れている姿が有名なのと同じ種類のお魚です。

このネブト、どれ位のサイズかと申しますと、小さいのは小指の先位、大きくても精々親指の先程度のものです。 まぁ、唐揚げにしたら1人で10匹程度は軽く食べてしまいますので、当日の10名分は軽く100匹を超えていたと想います。

先ずはその100匹以上のネブト君たちの鱗を綺麗に洗って外してから、一匹ずつ、頭を外します。「イシモチ」という別名が示す通り、ネブトの頭の骨は非常に硬く、食べ難い為です。胸鰭の辺りを摘まんで身体の1/3位の大きさの頭を引っ張ってちぎりとります。

これ、お魚係りになった皆さんにやって頂きました。

言うは易しですが、結構難しい。取り組んで下さったお嬢さんから、「え、私、これ無理!身が壊れちゃう。」という聲が漏れたのを聴いたような覚えがあります。

でも、100匹以上、きっちり頭を外して頂きました。

次は小蝦。 瀬戸内では1年を通じて実に様々なサイズ、種類、名称の小蝦を食べます。 この日の蝦はまぁ、小さい方でしたね…。どれ位小さいかというと、大きくても小指位のサイズでした。

小蝦の唐揚げは頭ごと丸ごと全部揚げて食べられますので特に下拵えはありません。嬉しい事です。

が、サラダの方は、茹でた蝦の頭を外して殻を剥いてから使います。 こちらも、まぁ、お一人5匹は軽いという感じですので、50匹以上は、剥いて頂きました。

言うは易しですが、これも結構チマチマとして難しい作業です。取り組んで下さったお嬢さんから、「え、私、これ無理!剥けないで身が壊れちゃう。」と呟いていたのを聴いたような覚えがあります。

でも、50匹以上、きっちり殻を剥いて頂きました。

そして、お刺身。

サヨリ5本に、コチ3本、カレイ、スズキ、チヌ。

実は、わたくしもお刺身用にこんなに沢山の種類のお魚を用意したくは無かったのです。 が、何故かその朝の市場には小型の魚ばかりで人数分を纏めて取れる大きな魚がいなかった・・・。 コチやスズキ、チヌは1枚で10人前のお刺身が採れる程のサイズにもなりますが、この日のものはどれも小さかった。

それで仕方なく数を増やすしかなかったのです。

しかも、買い物から戻ってから、皆さんの到着までに下拵えをしておく時間が無かった為、私が卸した身から小骨を抜いてお刺身にする工程は全て皆さんにお任せする事となってしまったのでした。

合計、20枚以上ものわたくしが卸した切り身をお刺身にひいて盛り付けて頂きました。

上記の作業を全てやって下さったお魚係りだった方々、あなた方は本当に素晴らしいです。 あなた方は、間違いなく、どこに行っても、どんな時代が来ても、生き伸びて行ける方だと想います!(笑)

でも、やっぱり、「これ、絶対無理。私がやると身が壊れる。」という呟きも聴こえた覚えが…(笑)

何もそんな小さな魚を食べなくても…、と想われる方も多いと想います。かつて東京で暮らしていた頃のわたくしも間違い無くそう想っていたでしょう。

しかし。。。、

実は、瀬戸内の魚の美味しさの神髄はこうした小魚、雑魚にこそあるのです。

有名な「ママカリ」も実はそんな雑魚の一つなのですが、私が特に凄いなぁ、と想うのは「ギギ」です。

「ギギ」は「ヒイラギ」と呼ばれる魚ですが、精々体長5cm程度の薄い菱形のお魚で、しかも、殆ど身らしい身が付いていません。お醤油で煮付けるのが一番ですが、そのまぁ、薄っぺらで小さい事といったらありません。その薄く小さいお頭付きを1枚だけお皿に乗せて戴くのが基本です。尖ったお箸の先でチマチマチマチマと身を突いては有るか無しかの身を解し、チョビチョビと摘まんでは口に運びして頂きます。身を解して食べてしまったら、これまた小さな骨を上下裏表しゃぶって間に残っている僅かな身までを舐め尽くします。小さな身体に似合わず、実に旨味の濃いお魚なのです。

純粋な量的には、ギギ1枚を食べ尽くすのと、鮭の切り身の「一口分」とで殆ど変りがありません。

ところが、そんなギギ1枚が、鮭の切り身「一切れ分」を遥かに超える美味と満足感とを与えてくれるのです。

「ギギ」を戴くと、食べるという事の奥の深さを想わずにはいられません。

瀬戸内に移って来た当初は、わたくしも勿論そんな事は想像も付きませんから、どうして、瀬戸内の魚というのは調理にも食べるのにも、こんなに面倒臭い小魚ばかりなのだろう?と想っていた事でしたが、今は、小魚にこそ本当の美味しさがあるのだ、と想うようになっています。

ですから、皆さんをお迎えした当日、偶々市場に調理のし易い大型の魚が無かったのは、そんな、瀬戸内の真実を東京からのお客様達に伝えたいと想った瀬戸内の神様たちのお計らいだったのかもしれないな…、と今振り返りつつ想うのです。

2013/03/28 01:23 | 暮らし, 食べる | No Comments

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