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2008/02/01

 

「どうしたら僕、大人になれるでしょうか?」
「まずは"全裸で何でもできる"ようになることだな」
偉大な先輩であるAさんは思慮深げな横顔で、18歳の僕にそう教えてくれました。
童貞のまま上京して、演劇の道へ入り、厳しい稽古と下働きの日々、恋はおろか風呂に入る時間すら無く、あらゆる意味で"全裸"になる機会を逃しながら生きていた僕は「やはりそうか」膝を打ちました。

上記は1997年6月14日、「早稲田大学演劇研究会」の正会員として、初めて先輩諸氏と杯を交わすことを許された——暴力団風に言えば"盃事"にあたる宴席での会話です。

たかが大学サークルの新歓コンパに"盃事"もないだろうとお思いでしょうが、先輩権力の横暴と理不尽さに於いてはヤクザのそれと比して少しの遜色も無く、新人会員を強制的に収容して昼も夜も授業も無く労働させることにかけては現代のシベリア抑留と言って過言でない、そんな旧時代の遺産が、仄暗い早稲田裏長屋のサークル棟に、20世紀末まで生き残り続けていたのです。

 

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←上京以後の数千日を、僕はこの、早稲田学内でも魔窟的場所にある、サークル・アトリエに半軟禁状態で過ごしました。この場所についての詳細な説明は、関係当局、特に大学の授業料を3年も余分に払ってくれた両親の腹の虫等への配慮から、今回は割愛させていただきます。どうしても気になる方とそれ以外の方は、

→早稲田大学演劇研究会公式HP

 

もしくは、

同サークルの大先輩、鴻上尚史氏の著書
→冒険宣言 をご一読ください。

 

また、なぜかたまたま偶然このジャンクステージ内でも、同サークルの5代後輩である帯金ゆかり嬢が、この場所に関する記事を書いております。合わせて読んでいただくと、時代時代の雰囲気など分かって楽しめるかもしれません(多分)。
→帯金ゆかりの軽はずみ「血反吐を飲み込んで耐えろ!!」

 

話は戻って、A先輩が言う「全裸で何でも…」についてです。
「その"何でも"というのはつまり…」口ごもる童貞の僕を尻目に、A先輩は隣にいた美人と評判のB先輩へ目配せし「おいB、一肌脱いでこいつを大人にしてやってくれよ」言いました。B先輩は少しモジモジしてから「…分かりました、Aさんが言うなら…」顔を赤くして僕の顔をみつめてきました。

いくら先輩権力が絶対だからといえ、20世紀日本にそんな破廉恥な無茶苦茶が通っていいのか!ぜひ通って欲しい!まずい、俺ずっと風呂入ってない!18年の短い男子人生が走馬燈になって泡を食っているうちに「じゃあ、また後でね」B先輩は別の席へ移動してしまいました。その後の宴は何を飲食しても上の空、口角は緩み放しでした。

数時間後、緩やかな"盃事"コンパは一次お開きになり、はじめはただ河岸を変えて飲むだけなのだと思っていました。同期たちと談笑などしながら、二次会会場であるはずのサークルアトリエの鉄扉を軽い気持ちで開けました。そこには何故か、(昼間には無かった)色とりどりの照明でライトアップされた「舞台」が設置されていました。状況を飲み込めずにいる僕たちを、さっきのコンパとは打って変わり鬼の形相となった先輩諸氏が、怒声をあげながら舞台上へ追いやります。昨日まで触れることすら許されなかった"アトリエの舞台"に上がれる喜びも束の間、付帯のスピーカーから爆音のハードロックが流れ始めました。なにかがヤバイ、そう思った瞬間、角材とビール瓶を片手に生まれたままの姿となったA先輩が、鉄扉の錠を下ろしながら言いました。

 

「はい、一発芸ください」

 

shinkan_butai一発芸??????
パニックになりながら、舞台正面の「客席」に座る先輩たちを見れば「さっさとはじめろよっ!」全員目が座っています。「演らなければ殺られる」新人一同、瞬時に頭を切り換えて必死の一発芸大会が始まりました。ですが、そんな恐怖と焦燥に駆られて披露する"ネタ"の面白かろうはずもありません。何より「とっとと笑わせろよ(怒)」先輩達の怒号、そもそも(怒)マークが絶対間違ってます。(怒り)VS(恐怖)という磁場から(笑い)を生み出せという錬金術よりも不毛な空間。30分もすると僕らの持ちネタは付き、1時間を過ぎる頃には汗・涙も枯れ果て、それでもなお際限なく笑いを求める鬼たちの怒声。新人会員たちは絶望の淵へ落ちていきます。

 

そして2時間を過ぎた頃、A先輩が舞台上の僕らに向かって言いました。

「凡庸な芸術家は"模倣"するが、偉大なアーティストは"奪う" さあお前ら、俺から奪うんだ!」

そう言い放つ彼自身が既に一糸まとわぬ姿であり、これ以上彼から何を"奪え"というのか…。ですが、僕らに戸惑っている暇はありません。仁王立ちした彼は、これまた仁王立ちした彼のセンシティブな部位を隠すこともなく、鬼の形相でビール瓶を振り回しては、つまらないネタを行った新人たちにそれを投げつけて来るのです。

気が●●っている!そう思って、正気の人間を探そうにも、いつのまにか客席にはA先輩に呼応して一糸まとわず仁王立ちする先輩諸氏が20数名、そしてそれに全く動じていない先輩女史10数名、気付けば照明音響スタッフも仁王立ち。この偉大なる仁王達から、僕らは何を奪い、何を演じる

2008/02/01 12:00 | 未分類 | No Comments

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