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2010/04/06

痛い。
これは文字通り「痛い」映画だ。
十字架上の死に至るまでのキリストの受難を描いたものだが、
この十二時間には人間が体現できる全てのドラマが煮詰まっている。

監督のメル・ギブソンはキリストの苦しみを描くツールとして
映画を効果的に使っていることに感心する。

映画のもつ効力とは。
それは絵画や小説を凌駕する立体感。
視覚と聴覚を同時に刺激して他のメディアを圧倒する臨場感。

ジム・カヴィーゼル演じるイエスの身体に
ローマ兵の鞭が振り下ろされ、皮膚が裂け、鮮血が飛び散る。
自分の身体が切り裂かれたような疑似体験。
思わず目をそむけたくなる。
血のにおいすら漂うほどのリアリティだ。

リアリティを感じるのは拷問の場面だけではない。
ローマ兵に合図するためにユダがイエスに口づけする場面では
二人のこわばった表情から
イエスのこれからの過酷な運命を予感させる不安が漂ってくる。
観ている者の第六感まで刺激して目覚めさせるカヴィーゼルの演技は見事。

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観る前はメル・ギブソン本人が敬虔なクリスチャンときいて、
さてはプロパガンダか、布教活動かと警戒したが、
自分を痛めつけるローマ兵へのイエスのセリフに
クリスチャンかどうかなど関係なく
魂を鷲づかみにされ、ゆすぶられた。

メル・ギブソンの一切妥協のない作りこみと
それに応え身体を壊しながらイエスを演じ切ったジム・カヴィーゼル。

彼らの「パッション」が、この受難劇をプロパガンダとは別次元にもっていった。

2010/04/06 07:02 | 映画 | No Comments

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