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2009/11/30

モントリオールで猛威を振るった熱いウイルスが東京襲来!

ひき続きTIFFレポート第3弾!

影のグランプリと呼ばれる観客賞に輝いたカナダ映画
『少年トロツキー』も忘れ難い作品だった。

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©2009 TROTSKY PRODUCTIONS INC.

レオン・ブロンスタイン(ジェイ・バルチェル)は、
自分を20世紀初めのロシアの革命家レオン・トロツキーの生まれ変わりだと信じている
エキセントリックなモントリオールの高校生。

 どのくらい変かというと、二度の国外追放や暗殺される末路まで
そっくりそのままトロツキーの生涯をまねしようと固く決心している。
そんな彼のいちばんの関心事は、
トロツキーの革命同志だったレーニンと
最初の妻で革命のパートナー、アレクサンドラを探すことなのだが……

 trotsky_01.png

© 2009 Toronto International Film Festival Inc. All rights reserved.

このレオン少年は熱い。とにかく暑苦しい高校生なのだ。
なにしろ自分のことをトロツキーの生まれ変わりだと思い込んでいるくらいだから、
16年間鍋に火をかけ続けたシチューのような

グラグラ煮え立ったしつこい熱さなのである。

キャラがあまりにも立ちすぎると観客の共感を呼びにくくしてしまうが、
不思議と病的な感じは漂ってこないのだ。
それはレオンがたんなる過信という病に取りつかれた誇大妄想狂ではなく、
批判に傷つくナイーヴさを持った、ふつうっぽい折れやすさを垣間見せるからだろう。

くわえて、マラディブなどモントリオールのご当地バンドを使ったポップな歌や、
『戦艦ポチョムキン』のパロディを挿入した遊び心が、
あり得ない設定の世界を親しみやすくするのに大きく貢献している。

レオンはトロツキーの人生そのまま、

父親の経営する縫製工場でハンガー・ストライキを先導して、

親の逆鱗に触れて私立の寄宿舎学校からパブリック・スクールへ転校させられる。
そこにはドラッグとセックスが蔓延するいわゆる底辺校で、

生徒たちは遊ぶこと以外何事にも無関心。

学生組合もあるが名ばかりで部室は喫煙ルームと化している。
企画するのは集会じゃなくダンスパーティー。
そんな無気力な組合に熱いレオンが加入する。

初めはウザがっていた組合のメンバーも次第にレオンの情熱に感化されていく。

作品の中でレオンがどう作用しているかという視点で観ると
また違う旨味が引き出せる。

レオンという変り者を異物として表面上平穏な世界にポンと放り込む。
それによって、彼に関わる全員の本質が丸裸にされていく。
自分以外のことに無関心だったクラスメートには、
彼のパッションが熱伝導のように伝わり、
ついには彼らの重い腰を上げてしまう。

そう。

レオンは一種の善玉ウイルスなのだ。
関わる人みなに熱さを感染させてしまう。
そして役目を終えたら別の街へいって
そこでまたパッションをまき散らすのだ。

無関心という厚い頑固な氷を溶かす。
レオンの及ぼす作用は今世界が熱烈に求めているものに違いない。
いつの間にか、この21世紀のトロツキーに声援を送ってしまった。

2009/11/30 07:41 | 映画 | No Comments

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