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2013/10/29

秋は学問の季節、かどうかはさておき、
10月に入ってから、学会発表をする機会が立て続けにあった。
前半には、日本南アジア学会、後半には、日本インド学会という、
それぞれ、特定の国・地域に関わる、いわゆる地域研究者を集めた学会であった。

こうした地域研究の学会に出る場合、あるいは、
先月スタッフとして関わった社会情報学会のような、情報系の学会に出る場合、
そのいずれの場合も、自分のような「ブータンの情報化」という、
ニッチな研究対象を選んでいる人は、どうしてもマイノリティになってしまう。

その結果、学会で発表するときには、
・ブータンとはどんな国か?
・情報化を研究するにあたって、なぜブータンを選んだのか?
という、基本的な部分をまず最初に説明しなければならない。

しかしながら、大体こうした場所で一人に与えられるのは、
せいぜい15分から長くて20分くらい。
基礎知識編を10分もやってしまっては、本論に到達すらできない。
必然的に、贅肉を削ぎ落とす作業に多くの準備時間を割くことになる。

ところで、アカデミックな世界では、パワーポイントの発表は、
「1枚1分」というのが、定説となっている節がある。
10分の発表なら10枚、20分なら20枚、程度におさめる、というのが、
暗黙の作法のようにもなっている。

しかし、これだって、スライドのほとんどが文章で書かれているのか、
あるいは、写真が1枚だけ掲げてあるのか、によって当然違ってくる。
ただし、アカデミック分野のパワーポイントというのは、
得てして、黒い文字で埋め尽くされていることが多いのだが…

—–

そういえば、会社員時代にもパワーポイントを作る機会は多々あった。
自分自身が発表するのではなく、会議で使うための資料として。

その資料作成に際しては、いくつかの決まり事めいたものがあった。
あまり細かいところまでは記憶が定かではないが、
概ね、このあたりだったような気がする。
・文字サイズは24pt以上
・文章ではなく箇条書き
・グラフやモデルを多用

つまり簡単に言うと、「読ませる」プレゼン資料を作るな、ということ。

短い会議の中で、端的に要点を伝えて相手に理解させる(納得させる)ことこそが、
プレゼンテーションの目的であるならば、
詳細はあえて説明せず、結論をまず述べて、その理由付けも簡潔明瞭にする。
そして、質問に備えて、仔細なデータをバックヤードで持っておく。
なるほど、理に叶っている、ような気もする。

とはいえ、当然、企業のプレゼンと、学会発表とは、その性質から大きく異なる。
学会発表で問われるのは、その研究の論理構成や研究手法の確かさであり、
どちらかというと、結論そのものよりも、そこへ至るプロセスが重要視される。

そうすると、細部を端折るとどうせ突っ込まれるので、
それなら最初から言いたいことは全部書いておこう、とこうなる。
結果、1分間で1スライド「読む」ことも危ぶまれるような、
大層立派なスライドショーが出来上がることになる。

——

ところで、日本人はプレゼン下手、とよく言われる。
『TED (http://www.ted.com)』で繰り広げられているような、
感情を込めて、ダイナミックな動きをつけながら発表をする、
という人にお目にかかることは滅多に無い。

一方、昨年、こんな記事を目にしたのを思い出した。

AMAZON STAFF MEETINGS: “NO POWERPOINT”
http://conorneill.com/2012/11/30/amazon-staff-meetings-no-powerpoint/

曰く、プレゼンテーションを使うのを止めて、
「6ページの文章化されたメモ」を事前に共有することで、
無駄な時間を省き、かつ、きちんと筋道の立ったアイデアを伝達できる。
当日の発表はごくシンプルなもので済む。

実はこの手法、むしろ、学会発表の形式に近いような気もする。
たしかに、学会の場では、手元の配布資料として、
パワーポイントをただ打ち出したものではなく、
発表する研究内容を記したA4で2〜4ページほどのサマリーを配る、
という習慣がある(ところもある)。

そもそも、そうした手元資料を配るのであれば、
その内容をわざわざパワーポイントに複写して投影する、
なんて必要自体無いのかもしれない。

“Think Complex, Speak Simple”
この言葉は、あらゆる世界のプレゼンテーションに通用しそうだ。

発表内容は十分に熟慮する必要がある。
しかし、発表そのものを複雑にしてしまっては、相手の理解が追いつかない。
逆に、発表をシンプルにしようとしすぎて、
話す内容まで中身が無くなってしまっては本末転倒だ。

結局のところ、学会発表だから、とか、競合プレゼンだから、とか、
そういったテンプレートに捕われた発表には何の意味も無い。

なるほど、派手なプレゼンテーションは目を引くが、
実際、発表者の自己満足で終わってしまうことも少なくない。
その背後に、どれだけ豊かなアイデアがあるか。
そして、あるのであれば、それを如何に聴衆に感じ取ってもらうのか。
プレゼンターは、まさに、そこの部分にこそ力を注ぐべきなのだろう。

2013/10/29 12:00 | 大学院生活 | No Comments

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