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2008/08/02

■綱渡り

「フィルコ様 ライター・スタッフミーティングをやりますので、出席の程宜しくお願いします。場所は~・・・。」

ライターとしてこのJUNKに世話になって約8ヶ月。2月の寒い夜のこと。
中だるみというわけではないが、忙しさにかまけて記事の更新頻度が落ち気味の俺に、こんなメールが飛び込んできた。

「とうとう来たか。」

こちとら不況の世を渡った中小企業のサラリーマン。「肩たたき」が執行されるときの雰囲気、臭い。嫌と言うほど見てきた。
規模、クオリティを拡大しつつあったこのWEBマガジン。どこから連れて来るのか強烈に面白いライターが続々と増えている。
同時に「入れ替え」も静かに進行していることを俺は見逃してはいなかった。

「ヤられる。間違いない。」

額に嫌な汗が滲んだ。「バスケの楽しさを広く世の中に周知させる」という使命をまだ全然果たせてない。俺はここで降ろされるわけにはいかない。だいたいにしてバスケはまだシーズン途中だ。ミーティングの会場についたとき、人生最高の土下座の準備は出来ていた。

乱れる鼓動を必死で抑え、冬でも陽気なウザいオジサンを装いつつ会議の席に着く。
雑談を交わしながら、秘技「亜光速土下座」を繰り出すタイミングを計る。ヤラれる前にヤル。それが俺の流儀だ。

そのとき、須藤代表の口がこっちを向いて動いた。今だ!亜光速モードON!!

 フィルコ 「たいへんもーしわけ・・!!」

   須藤 「舞台イベントをやろうと思います。フィルコさんスタッフで宜しくです。」

 フィルコ 「ございま・・・・・・へ?(・¥・) 」

亜光速土下座を途中で停めるのは非常に危険だ。常人なら背骨が砕けているところだが、日々の激務(クレーム謝罪)に鍛えられた私は、かろうじて床を舐めることなく寸止めすることができた。

 フィルコ 「ぶ、舞台?」

 須藤   「そう、舞台!!読者の皆さんのために、ライターや、
        違うジャンルの読者さん同士の交流の場を作りたいんです!」

全く想定外の展開だったがそこで焦る俺ではない。0.1秒で事態を飲み下し、さらに0.3秒でその先の行動を1000手ほどシミュレーション。
カタカタカタカタ・チーン!(昭和の表現)。チャンス到来とみた。

「ワタシ、バンドとかヤッテルのデ、ハコ(会場)トカ少しワかリマ~ス!コネもアりマ~スヨ!」

すかさず秘技「片言ハッタリ」を繰り出し冷静にその場を乗り切ると、あれよあれよと話は進んだ。
結局俺の役目は、ハコ探し(会場選びと交渉・セッティング)、ならびにバスケコーナーの企画、司会担当ということで、その夜の会議は終了。なんだか色々背負ってしまった感が無いでもないが、とりあえずクビは免れたらしい。
帰り道の遅い晩飯。スタ丼に餃子を付けた。

満腹感と安堵感で満たされたこの夜。後に大きな困難に見舞われることなど露にも思っていなかった。
突如現れた一筋の光に、「JUNKSTAGE」がなぜ「JUNK」STAGEなのか、俺はすっかり見失っていた。

■壁

大都会・東京には夢を抱えた人間が星の数ほど集まってくる。そしてその夢の数だけハコがある。
大きさは様々だが、だからこそ容易にぴったりのハコが見つかると思っていた。現に、今まではそうだった。

以前のバンド仲間で、今はレコーディングや音響の仕事をしているダチに連絡を取った。知り合いのライブハウスを幾つか紹介してもらい、担当者に会うところまでは何の問題も無く進んだ。まさにトントン拍子。いやトントントン拍子ぐらいか。むしろトトトン拍子かもしれない。

しかし、いいとこまで行きながら、なかなか最終決定に至ることが出来ない。いつも何かが引っかかる。
その原因に気づいたとき、俺は絶望の淵に突き落とされた。原因は出演者達の、まさに「JUNK」ぶりだった。

クラシック(ピアノ、チェロ、コントラバス)演奏で、車椅子バスケのパフォーマンスで、ぶっとび演劇で、お着物ショーで、写真で、サルサ歌い踊りまくりで、青年海外協力隊で、パティシエ修行で、フランス留学で、一夫多妻で、こんなに気持ちよく全方位に飛びまくった彗星達を、ひとつの舞台にまとめて輝かせるなど、そんな都合の良いハコがそうそうあるはずが無かったのだ。

しかも、お客さんにはゆったり楽しんでもらいつつ、ある程度の集客数(3桁以上)を見込まなくてはならんという。

ハコ探しは完全に壁にぶち当たった。きらびやかなショービジネスのジャングルで、俺は飢えた迷い狼になってしまった。

最初はあちこち調子良く吠えまくっていたが、結局はすべて断らざるを得なくなり、結果的にダチの顔も潰すことになってしまった。
自分の仕事の出来なさ加減にイラつく。難しいもんだ。

潤沢な資金があれば話は別なのかもしれないが、なんせこちらの手持ちは夢と希望と情熱だけ。
ギラギラした高度成長期の若者の気分だった。実際はヌラヌラしたおっさんなのだが。

■フラッシュバック

季節は春になっていた。
東京の桜は例年通りに咲き、通りは穏やかな光に満ちていたが、俺はといえばハコ探しの壁を超えられず、いまだ鬱々とした日々を送っていた。

珍しく仕事が早く引けた俺は、気分を変えるため長年世話になっている池ノ上のBARに向かった。
カウンターには悪友のミュージシャンがバーテンとして立っている。昔懐かしい話に、こっちもやっと花が咲いた。

バーボングラスを傾けながら、ヤツがリリースしたアルバムの話しになった。そのとき突然頭の中にある光景がフラッシュバックした。
広いステージ。吹き抜けの高い天井にミラーボール。グランドピアノ。大きなスクリーン。
あれ?どこだ?いいんじゃねぇかここ。

「あのさ、レコ発ライブって、どこでやったんだっけ?」

「吉祥寺だよ。スターパインズカフェ。忘れてたの?ひでぇオヤジだな。」

うるせぇ、お前同い年じゃねぇか。と思いつつ、すぐにスターパインズカフェのHPを調べ、早速メールを打った。

■決断

翌日、スターパインズカフェから早速返事が来た。内容について詳しく打ち合わせたいとのこと。
しちめんどくさい質問にもきっちり回答を入れてくれている。

こちらの都合で何度も日付や時間を変更してもらったにもかかわらず、担当の藤崎氏は快く打合せをセッティングしてくれた。
メールの文章も丁寧で細かく気遣いが行き届いている。これは相当に出来る人だなと、期待感は高まった。

打合せ当日、約束時間より少し早めに現地に着いた俺は、先に会場に入れてもらい藤崎氏を待った。
はたしてフラッシュバックは間違ってなかった。地下1階と地下2階の吹き抜けの会場。高い天井は、そのまま可能性の高さを示しているように思えた。

「いやいや、お待たせしましてどうもすみません。ブッキングマネージャーの藤崎と申します。本日はわざわざありがとうございます。」

程なく現れたこの丁寧な挨拶の主は、上から、リーゼント、細身のデニムジャンパー、でかいバックル、革パン、革ブーツ。
早速打合せに入ったのだが、人当たりが良くとても丁寧な説明と、それを発信する目の前の完全なるロッケンローラーとのギャップを埋めるのに、少々時間がかかった。

説明を聞けば聞くほど、仕様的に間違いないと思えた。一番の障害になっていた「ピアノを弾く同じステージでバスケもする」という無理難題も、ここなら何とかなるかもしれない。費用面は厳しいが、頑張りゃギリギリ何とかなりそうな範囲だ。

「行ける。」俺の腹は決まった。あとは首脳陣の同意だ。

その日の打合せは、店の概要、料金プラン、設備、など一通りを説明をしてもらい、
こちらの演目については概略を伝えるぐらいで終わった。

スターパインズカフェといえば、かなり名の通ったプロのアーティストもライブをやる人気のライブスペース。
早く日程を抑えなければいけない。こちらの希望は8月2日。多忙な出演者が全国から集結するため、ピンポイントだ。

すぐに日程を合わせ、代表の須藤女史と再度同カフェを訪れた。
資料をもとに費用や演目について確認し終えると、女史は目を輝かせて一言。

「ここがいい。ここでやりたいです。」

藤崎氏に日程を押さえてもらい、ついにハコが決まった。

一時はどうなることかと思ったが、どうにかこうにか格好をつけることは出来たようだ。
帰り道、スタ丼に餃子とビールを付けた。
注)実はこの時点で8月2日に先約を入れている方がいましたが、藤崎氏の対処と先方のご好意により、
  日程を譲って頂いた経緯がありました。この場を借りてお礼をさせて頂きます。
  ありがとうございました。

■狩り

その後何度か主要スタッフによるロケハンを行い、徐々にプランを固め、これを書いている今は追い込みだ。

ロケハンでは「受付でJUNKSTAGEと言えば、いつでも入れるようにしておきます」などと言ってもらい、
海のものとも山のものとも知れない団体に、ここでも大変良くしてもらった。実際かなり無理も聞いてもらった。
ライターの立場で言うのもなんだが、力を持たない一介のWEBメディアにとって、大変ありがたい話だ。

ロケハン、略さないで言えば、ロケーション・ハンティング。つまりこれは「狩り」だ。
ハコ狩り狼は、放浪の末に約束の地にたどり着き、仲間を呼んで狩りをすることが出来たのだ。

具体的に企画を詰める段階になると、スターパインズカフェとのやり取りは総合演出のイトウシンタロウ氏がメインになり、
俺はバスケ企画と司会に注力するようになった。ハコ狩り狼は、こうして役目を終えた。

しかし俺は忘れない。ハコ狩り狼として過ごしたこのハングリーな数ヶ月を。
ちゃらんぽらんな俺に力を貸してくれた多くの人々を。
そして俺は守り続ける。スターパインズカフェを一押しにしたもう一つの理由。

「わりと家に近いから。」

この秘密を。

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御礼

スターパインズカフェ 藤崎様 スタッフの皆様
青山・月見ル君思フ 朝河様 今関様
友人          高橋 尚行様
会場の決定までに多大なご協力を頂いた皆様、誠にありがとうございました。
おかげさまで、無事に第1回公演を迎えることができました。

私自身が動けるかは分かりませんが、本イベントも2回、3回と回を重ねていくつもりですので、
今後とも当JUNKSTAGEを宜しくお願い致します。

2008/08/02 12:00 | 【080802特別号】 | No Comments

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