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たしか、4月になったばかりのころの話だったように思う。
月1回、編集スタッフはミーティングを行っている。
その場で代表の須藤が言った一言が、受難の日々の始まりだった。
その日集まったスタッフを前にして、須藤はまずにっこりと笑った。
須藤の笑顔は要注意である。それは大抵無理難題を押し通すときに発揮されるものだからだ。
身構えたスタッフに、須藤は前置きもなく「イベントやることにしたから」。
イベント??
目が点になる一同。寝耳に水ではなかったが、当然のように宣言されてびっくりした。
だが、驚愕はまだ続く。
さらに須藤は、これでもかというスマイルとともに一言。
「パンフレットも作るからね」 これが、嵐のような二カ月をもたらしたわけである。
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須藤の要望は、媒体資料を兼ね、なおかつイベント当日に来場してくださったお客様たちにJunkStageを知ってもらう、興味を持ってもらえるもの、ということ。
編集のスタッフのなかで、紙媒体での編集経験があるのはわずか2名。スタッフがパニックになったのもあにはからん、というところであろう。
とはいえ作るからにはいいものを、を合言葉にわたしたちは動き出した。
パンフレットを作るには、まず台割というものを作る必要がある。
どんな構成でどんな印象でどんな紙で、どんな風の冊子が作りたいのか、を書いた設計図のようなものだ。設計図が一番大事だからと、あるときは新宿で、あるときは渋谷で、浜松町で、誰に何を書いてもらおうか、と頭を悩ませること数日。
この人に話が聞きたい、という意見の採用でインタビューを、この人の原稿が読みたい、という意見からコラムの執筆を依頼することが、決まった。
致命的に時間が足りない、とあえぐような気持で、ライターの皆さんに執筆を依頼。
「2週間で書いてください」
そうとう無茶なお願いだったのに、誰も「いやだ」とは言わないでくれた。
多忙な中でインタビューを受けてくださった方たちも、快くド素人インタビュアーのおっかなびっくりな質問に答えてくれた。
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これで中身はできた。次はデザインである。
今回の冊子のコンセプトは「手に持ってかわいいもの」。
天才好きの須藤をして天才と言わしめるDTPデザイナーの田原さんと御相談しつつ、デザインを決めた。女性陣が8割を占める編集スタッフのこだわりで、A5サイズ、マゼンダピンクをアクセントにしたポップでお洒落で、でもJunkらしい冊子はこうして次第に形になっていく。
原稿の誤字脱字チェックと並行して探していたのは印刷所。
清貧運営されているJunkStageはハッキリ言って貧乏である。
低予算で、でもかっこ可愛くて、という欲望丸出しなお願いをかなえてくださったのはカワチヤプリント様。数回に及ぶメールのやりとりのなかで、「わたしたちもいいもの作りたいですから」と言ってくださり、それを形にしてくれたときの感動。
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そして、出来上がったのがこの冊子である。
▲見開きの1ページめ。かなり、格好いい。
パンフレットの右上には、田原さんが「ついでだから」とデザインしてくださった新しいJunkStageロゴが踊っている。ポップでスタイリッシュで複雑に絡み合った人間模様を象徴する、あたらしいJunkStageを象徴するデザイン。
スタッフのひとりが、「この冊子を見るためだけでもイベントに来る価値があるよね」といったが、それは決して身内贔屓だからではない。
このパンフレットをやっとみなさんにお届けできることを、スタッフ一同誇りに思っているのだから。