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以前コラムに書いた時に ちょっぴり反響をいただいて
嬉しかった“競り”について続編を書いてみました
以前のコラムにも書きましたが
私たちが仕入れている市場には
競り台が6レーンあります
それぞれ競り台の前には電子表示板があり
出荷されるものの名前、品種、産地、出品者、出荷ケース数(残数)などが
わかるようになっています
6レーンにいろいろなお花が同時に流れてきて
セリ人のお兄ちゃん?の掛け声とともに
次から次へと競りにかけられます
私たちはお目当てのものをキョロキョロしながら探し
これだ!と思ったものを値段を見定めてセリ落としていきます
とにかく待ったなしの同時進行なので
2時間から長いときは3時間半ぐらいかかりますが
ずっと気を抜けずに座りっぱなしです
いいものがあったら買おうかな~ぐらいのときはいいのですが
お客様からの注文があって
どうしてもセリ落とさないといけないものがあるときは
ずっとどきどきしてます
たくさん出てくる種類のものはいいのですが
1ケースしかないものや
生産者が1人しかいない場合
もしくはお客様のご予算には合わないような高値で
競りが進んでしまっているとき
こんなときはドキドキにハラハラが加わり
キョロキョロもギョロギョロに・・・
しかし面白いもので
私たちがたくさん仕入れないといけないときや
どうしても仕入れないといけないものがあるときは
他のお花屋さんも同じようなものなんですね
ですから市場全体が
盛り上がっているようにも見え ピリピリしているようにも見えます
手競りの市場と違って
機械のボタンでセリ落とすので
一見、とても冷静に行われているようですが
水面下ではなかなか激しい戦いが行われているのです
にこにこ談笑はしていても、競りについたらみんなライバルです
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先日はこんなことがありました
冬という季節は出荷されるお花も少なく
正月明けは競りが1時間で終わってしまうほど
そんなときにお客様から“ユリオプスデージー”という
黄色のお花苗のご注文を受けました
下見をしてみると1つだけ出ています
1つだけといっても1人の生産者の方が出しているという意味で
実際は51ケースという大量の出荷でした
これなら仕入れられそう、良かった~と
ちょっと安心して競りに臨みました
1ケース、2ケースしかない場合は
競り負けることも多々あるからです
さあ、実際に競りがスタート
他のお花も仕入れながら
いよいよ、そのユリオプスちゃんが流れてきました
きたきた
もちろん安く買えるに越したことはないので
半分ぐらいのケースが落とされた後に買おうかな?
でも確実に取りたいから
誰か1人でも落としたら買おうかな?
などと考えておりました
そしていざ、ユリオプスちゃんの競りが始まります
(※金額は適当です)
“はい、200円から”
(まだまだまだ)←心の声
残数 51ケースのまま
“では、190円”
(まだまだ)
残数 51ケースのまま
“はい、180円”
(そろそろ次ぐらいかな~?)
残数 0ケース
・・・
(ん?0?)
と思ったと同時に会場のあちこちから
“あっっ”という小さな叫び声が聞こえました
何が起こったのか・・・というと
ある1人の方が
51ケース一気に競り落としたのです
これを“全買い”と言います
マンガの大人買いみたいなものです
子供のような私たち小さなお花屋さんは1ケースずつ
かわいく仕入れて行きますが
大きなお花屋さんや園芸店さん、またはそういう卸先を
多々持っていらっしゃる方はこういう大人買いができるのです
その時の競り場は一瞬で不思議な盛り上がりを見せました
多くの方がユリオプスちゃんを狙っていたのです
そして私と同じような考えで待っていたところ
1人の方にかっさられてしまったのです
小さな叫び声や溜息のあと
あちこちから苦笑まじりの会話が聞こえてきました
同志がたくさんいる
まるでそこにいる人が皆
同じ痛みを分かち合った仲間のように・・・
たった“1人”を除いては。
その勝者はそんなみんなの様子を
どんな気持ちで眺めていらっしゃったのか・・・
心の中でガッツポーズをしていたのか
してやったり、だったのか
私たちには経験できないことです
ちなみに手競りではないので
だれが競り落としたのか わからないようになっています
が、みんな誰が落としたのかわかってます
もちろん
ちなみに、競りのボタンは
“1ケース”“2ケース”“3ケース”“5ケース”“全ケース”の
5段階の設定しかありませんので
この場合51ケース競り落とすというのが
いかにすごいことか、おわかりいただけますよね
うちの花屋もいつか勝者になれる日を夢見て・・・
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ちなみにこんな盛り上がりもありました
番外編ですが
夏の暑い日でした
競り人のお兄ちゃんが声を張り上げてます
そこに『ジジジジ・・・』と何やら黒いものが飛んできて
競り人の頭にピタリと止まりました
セミでした
思わず競り場全体から拍手が起こりました
ライバルですが変な連帯感も生まれる場所でもあります
いつか大都市の競りも見に行ってみたいと
夢見ております