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非常に久しぶりの更新となってしまいました。
最近はデザイン関係の仕事ばかりをしていて,絵を描くことがままならず
このコラムをどう書いたらいいものか頭を悩ませてしまっていました…。
しばらくこの状況が続きそうなので,イラスト的視点のロンドン・留学について何本か書いていこうと思います。
帰国して丸一年が経ち,わたしもいろいろ心境の変化があったので,そんなことについても。
オリンピック,そしていよいよ始まったパラリンピックで盛り上がるロンドン。
歩行者のかた,自転車のかた,お車のかた,各経路に変更がありますので注意してください…
競歩とロードレースと新体操?をもじって挿絵にしていました。
無理矢理ではあるけど,思わずくすっとなってしまうイラスト。
テーマも分かりやすいし,このまじめな絵柄とふざけた表情,動作がおもしろい。
フットボールですね。困りますね…
これも好きだった。オリンピック開催で道が塞がる,というのをこういう切り口で来る…
通行止めのマークなんかより,ユーモアがあって面白い。
TFLというのはロンドン交通局,かなりまじめな組織です。
でも,地下鉄に貼ってあるポスターや、こういったちょっとしたビジュアルがすごくユーモラスで凝っていて,
いつも楽しんでみていました。
日本ではあまり見かけませんが,向こうではイラストレーションがメインビジュアルに使われる事が非常に多いなと思います。
絵のタッチとしてはアニメの可愛いキャラクターというより,もっとリアルなイメージのキャラクター,もしくはグラフィックデザインとしての単純な絵が目立ちました。色合いもビビット。
個人的な意見ですが,ポスターなどの表現で,日本では写真媒体を使うことのほうが主という印象があります。
(それか,ものすごく[カワイイ]イラストか…)
経済誌などの雑誌の挿絵などもそうです。
オフィシャルな印象を与えたいときに写真を使った表現が適しているという考えなのかもしれませんが,
すこし皮肉ったり,テーマをより強調しダイレクトに伝える手段として,イラストレーションやグラフィックが持っている力は大きいのではないでしょうか。
ただ,需要として,イラストレーションは可愛いもの,やわらかい雰囲気のもののほうが求められているような,そんな印象も日本では受けます。
上のTFLのイラストも,面白いけど可愛くはない,というように受けとられると言うか…
逆にロンドンだと,きれいに描けているけど面白くない。となる。
嗜好や,心地よい表現の違いは,地域によって大きく変わってくるものかもしれません。
イラストレーターやデザイナーとしては,自分の表現したいもの,感性によっては,活動の場所も選んでいくべき,
そしてそれは必ずしも自分の国ではないかも…
とにかく 日本でのイラストレーションの可能性,需要,
もっともっと 広がればいいなと思います。
スケッチブックや雑記の中で,何度も描いてきたテーマがあります。
それは「選択」について。
冷静な判断で選べないもどかしさを抑えるため
そもそも何を迷っているのか整理したいため
迷っている状況を客観的に見たいため…
いろいろな心境で描いたスケッチや言葉が,幾度も登場します。
「選ぶ」という事は とても個人的な精神の動きなのではないかと思います。
もちろん,周りの人に相談をして第三者からの意見をあおぐ事は出来る。
それでも,そういった言葉を参考にして 判断をするのはいつも自分自身。
自分との対話の場所としてのスケッチブックに,考える場を求めるのだと思います。
生きている中で 繰り返し訪れる様々な分岐点。
そこに際して「選ぶ」という行為を重ねて, わたしたちは毎日毎時間を過ごしています。
今日の夜何食べよう 今日何を着よう 今日誰と過ごそう
どの学校に行こう どこに住もう 何をして生きていこう
刹那的なものから 人生を左右するものまで 様々にある「選ぶ」瞬間。
自分にとって重大であればあるほど 決心が難しくて
両方選びたいのに という我がままな気持ちになります。
留学も 大きな選択でした。
ただ,渡英した当時の段階では,まだ小さい方だった。
なぜなら予定していたのは1年間だけだったから。
その頃は 東京の大学の史学科に在籍していて
日本でポートフォリオ試験を受け,セントラルセントマーティンズカレッジのファウンデーションコース(学部予備課程/4年制大学の1年目にあたるコースが独立しているもの)のオファーを取りました。
一年生が終わった段階で休学届を出し,渡英。
ロンドンで1年間を有意義に過ごし,たくさん学んで東京に戻り,あとは自力でアートをやりながら史学で卒業するつもりでした。
その後,一番大きな「選択」の場面が訪れたのが 渡英した翌年の初春。
ファウンデーションコースの最後に,セントラルセントマーティンズのBA(学部)を受験し,オファーを取る事が出来たのでした。
絵を描くことは,自分が本心で,ずっとずっとやりたかったこと。
でもそれまでは独学で,高校は普通科,美術予備校に行ったわけでもありませんでした。いわば表向きには“非常に打ち込んでいる趣味”の位置づけ。
正直,絵でやっていく自信も勇気もありませんでした。
だから,とにかく 初めての専門教育を一年間一生懸命頑張ろう
そう心に決めて飛び込んだファウンデーションコース。
そして 一か八かで受けたBAの入学許可。
BAは3年間のフルタイムコースです。
お金がかかります。
東京の大学は,退学しなければなりません。
なにより 「一年間」と思って待っていてくれる人がいました。
当時20歳で そんなに長く生きているわけでもありません。
それでも,あんなに迷った選択はありませんでした。
選択肢は二択で単純。
ロンドンで美大を卒業し,絵でやっていくのか
東京で文学部を卒業し,どこかに就職して絵はサブでやっていくのか。
純粋にやりたい事を考えたら,確実に前者。
それでも後者に揺れるのは,自信がないから。
本当にやりたい事をやって挫折するのが,恐ろしいから。
その恐怖心を お金や人やいろいろな理由にすり替えて,
そういうものの心配をしているふりをして ぐずぐずしていたのです。
そんな愚かなわたしに 「選択」するきっかけをくれた一言がありました。
ファウンデーション終了前の3月頃に一時帰国した時の事。
大学に退学届を出すならこの時期だという理由でした。
でも 帰国してもまだ決心がつかずにいました。
そんなとき,心のどこかで「帰って来てほしい」と言ってくれる事を期待して会った相手から
「今帰ってくるなら,それは自分の前にある壁から逃げるってことだ」
と 一喝されました。
決心がつかないのは,人のためでもなんでもなく,
自分の弱さのせいなんだと悟りました。
そんな半端な気持ちでいるなら,絵でやっていく事などそもそも出来るわけが無いのです。
そのあと,わたしは退学届を持って大学に行きました。
驚くほどあっさりした手続きで,なんて簡単なんだと拍子抜けしまうくらい。
このとき悩んだ経験はそのまま,学部で学ぶ事,そして絵を描いて生きていく事に対してのモチベーションになりました。
退学して,人と別れて,それでも選んだ場所で,何が何でも泣きごと言わずにやり抜かなくては。
留学中その思いだけが支えだった時もあります。
ただ,あのとき悩んだ経緯があったから 一心不乱にやれたかな とも。
だから,「選ぶ」事に悩む時,たくさん悩めばいいのかなと 今は思います。
選択に「正しい」も「間違っている」も無いけれど
少なくとも 選んだ事実に肯定的でいられれば
それは救いになるし,その後の強さになるのではないかなと思います。
あの一言には, ずっと感謝しています。
さて 結局BAを卒業した後すぐに帰って来たかというと
そこでもまた選択があり 就職用の延長ビザを申請するに至ったのですが
またそれは別の機会に…
留学する予定の方,もしかしたら,おそらく,思っているより長くなる かもしれません…苦笑。
みなさんこんにちは。
今日, 新宿の世界堂へ買い物に行きました。
小学校の頃からお世話になっている 画材屋チェーンの大きな店舗。
つい 上から下まで全部回りたくなってしまう危険な場所です…
先月帰国後初めて訪れたとき びっくりしたのがST(世界堂チケット)の配布サービス。
(…浦島太郎です。。いつ始まったのかしら)
世界堂カードを会計時に使うと 合計金額の7%分の買い物チケットをバックしてくれる…
ただでさえカード会員は20%も割引になるのに
こんなサービスして大丈夫なのかしらと思ってしまうほどの 気前の良さ。
何にしても 消耗品を買い続ける側としてはありがたい限りなのですが。
さて その世界堂でレジに並んでいる時, 懐かしい物を目にしました。
それは“CASS ART”(カスアート)というお店の手提げ袋。
後ろに並んでいる方が, サブバックとして持ってらっしゃいました。
これは, ロンドンの画材屋さんの手提げなのです…。
懐かしくなって 思わず声をかけてしまいそうになりました(笑)
世界堂の規模には遠く及ばないのですが CASSはロンドンでは大きなチェーン店。
赤い看板に黒と白で書かれたロゴがトレードマーク。
LET’S FILL THIS TOWN WITH ARTISTS(この街をアーティストでいっぱいにしよう!)が店の標語になっています。
なかなか素敵です。
この支店はPiccadilly Circus の近く,Berwick Streetにあるお店。
Sohoという繁華街にあって, わたしの大学からも徒歩圏だったのでずいぶんお世話になりました。
右下に張ってあるのは割引のおしらせシール。
このシールが貼られると 水彩画用の画用紙をまとめ買い…。
ちなみにこのBerwick Streetは, 中古のCDやレコードのお店, それに手芸用品やアクセサリー用品を扱ったお店がたくさんある通りです。
OASISのセカンドアルバム(What’s the Story)Morning Glory?のジャケット写真は, この通りとNoel Streetという通りの交わるあたりで撮影されています。
真似して写真撮ってる方を 何回か見ました(わたしも… 笑)
Cass Art からもっとピカデリー寄りには, 平日毎日やっているマーケットも。
また, 日系の食品店やレストランの多いエリアでもあります。
右のビニールバッグがスタンダード。
左は30ポンド以上買うともらえるショルダーバッグ。
毎年いろいろなカラーバリエーションがでます。
今日見かけた方は灰色だった。
他に大きな画材屋では,London Graphic Centre, Cowling&Wilcox Ltd., Atlantisなどがあります。どのお店も学割があって,美大生は常にお世話になる場所です。
ただ 他の店に違わず閉店が早いので(5時半時〜6時くらい)放課後に死にもの狂いで駆け込む事も…苦笑
Graphic Centre の学割カード。ここは学生限定ゲリラセールもたまに。
もちろん小さい画材屋さんもあります。
British Museumの近くにある,L.Cornelissen&Sonは, ギシギシなりそうな板張りの床の,古いお店。
ちょっと暗めの店内に 所狭しと並べられた絵筆や絵具…
歴史ある店内にいるだけで 幸せな気分になります。
わたしの通っていたCSMの近く,Southampton Row にあるShepherds Book Binders Ltd. は紙と製本用品の専門店。
ポートフォリオ用のボックス作りのため,また卒論の製本のためなど,お世話になりました。
のり付けのためのブラシや, ヘラ, 色とりどりの布など
専門用具って 見ているだけでわくわくします。
ロンドンは, 世界堂や東急ハンズのような大きなお店は少ないけれど
専門分野に強いお店が多いです。
ローカルな感じが漂って 非常にすてきな事。
ただしその一方で, 不慣れな新しい街で特殊な用具を買うのは一苦労。
留学して, まず困った事の一つのが 画材/材料店を探す事でした。
美術を志す者なら, 基本中の基本のはずなのですが
これが 新しい街となるとなかなか難しい。
なにしろ 観光用の地図にはまず載っていない。
店の名前が分かれば ネットで検索もできるけれど
もちろんどんなお店があるのかすら 始めは分からないもの…。
わたしは幸運な事に 日本人の先輩からセンター(ロンドン中心部の事)にある画材屋さんをまとめて教えて頂ける機会があって助かったのですが
一方で 1年以上ロンドンにいても知らないままの方も…。
専門用具の店は特に 常に情報交換が欠かせません。
ここに載せたお店はリンクを張っています。
少しでもお役に立ちますように…
ただ, 美大の中にあるアートショップも(校舎によりますが)品揃えは悪くないです。
余談…ですが
これからロンドンに留学する方がいたら,基本的な文房具 特にシャーペンや鉛筆などの必需品は
日本で購入していく事をお勧めします。
なぜなら ロンドンの画材屋でも ぺんてるやパイロットの物を買う事になるから。
値段が倍くらいして, 悔しい思いをします。(しました)
鉛筆はステッドラーやファーバーカステルが主流なので, ユニ派の方は買っていってください…。
紙類は品揃えも豊富で便利です。
日本ではとっても高いThe Langtonの水彩紙も, ご当地なので半額くらいです。
コピックも売っていますよ〜!
こんにちは!
秋分の日を過ぎて,ようやく季節が変わってきた感じがしますね。
やはり気候の変化があってこそ,1年にメリハリがつくというもの。
メリハリと言えば
わたしの周りでも区切りになる出来事がありました。
帰国前に送ったロンドンからの引っ越し荷物
大きな段ボール箱にして3箱が 約2ヶ月の船旅を経て無事届きました。
あの暑い中 どこの炎天下の下を船で通って来たのかと思うと
ちょっと中を開けてみるのが怖かったけど
幸い 特に変化はなさそうでした。
ただ一つ焦ったのは
画材の中で唯一 船便で送ったコピックマーカーのセットが
収納ケースの蓋が開いてしまって バラバラ散乱していたこと。
その中のいくつかはキャップも開いてしまっていて 完全に乾燥。
やむなく廃棄。。
数本ですんだけど ちょっと…けっこう…悲しかった。
とにかく こうして引っ越し荷物が届いた事で
帰国自体もようやく完成した感じがします。
一つの大きな区切り,です。
ところで,今回の引っ越し作業の中で 特に頭を悩まされたものがあります。
それは大量のスケッチブック。
ファウンデーション(学部予備課程)時代とBA(学部)時代、
プロジェクトごとに一冊埋めなければならなかったこと
さらに リフレクティブダイアリーというビジュアルノートを
何か見たりきいたり調べたりしたときに 必ず記録しなければならない
という なかなかハードな決まりがあったので
(試験のときには,最終作品とともにこのスケッチブックとダイヤリーも提出する。)
5年間でとんでもない量になってしまいました。
ここに映っている分は 小さいサイズのもので
この倍以上のサイズのものが あと20冊くらいあります。
しかも一冊が分厚い。(資料を張ったりする, コラージュもする。。。)
紙なので重い上に ロンドンで定番のスケッチブックは みんなハードカバー。
とんでもなくかさ張って 普通の引っ越しの時でさえ悩みの種。
まして 帰国するとなると…
でも結局 服も何もかもかなり捨てた今回の移動の中
スケッチブックだけは ほとんど捨てませんでした
(一冊だけ どうしても嫌いなプロジェクトを捨てた。)
このずっしりした 乱雑な まとまりの無い記録の中に
じぶんが 5年間で感じたこと 悩んだ事
調べたもの 見たものきいたもの
使わなかったアイデア 恥ずかしい詩
頭の中の 思考の軌跡が, ぎっしり詰まっているから。
作品を作っていて 行き詰まったとき,スランプの時
いつもこの 昔のスケッチブックたちを開きます。
自分が気になったものばかりが 書きとめ描きとめられた本だから
悩んで絡まった頭の中にも すっと入ってきやすいというか
アイデアにつながりやすい。
困ったときに助けられるのは やっぱり過去にやってきた事…
過去の自分に助けられるたび, 日々の積み重ねを大事にしなければと
現在の自分も 気が引き締まります。
今日の1ページの記録が スケッチが
何年後かに 何かに つながっていくかもしれない。
今日も,スケッチブックを片手にあるこう。
重ねたページの分だけ,きっと良いものが作れると信じて。
*****
今週から,コラムタイトルが変わりました!
内容的には あまり変わらないとは思うのですが
『スケッチブックを片手に』も どうぞよろしくお願いいたします!
こんにちは!
昨日 9月11日,Junk stage第三回公演に行って参りました!
ジャンクステージに参加し始めた時はロンドンにいたので,
メンバーのお二人以外
どなたにもお会いしたことが無かったのですが(汗)
今回いろいろな方に 生でお会いすることができて
とっても嬉しかったです…
ご来場いただいた方にお配りしていた、うちわ/プログラム。
描かせて頂いたジャン子が!!!
これを皆さんが持っていらっしゃるのを見て
何だか嬉しくなってしまいました 笑
公演 とても楽しかったです…
歌あり踊りありジャグリングありジャズ演奏あり
こんなたくさんのパフォーマンスが一度に見れてしまう場なんて
ほんとうに なかなか無いだろうなあと思いました。
皆さんの『これが好き!』が集まった場でした。
うちわのジャン子と,小道具の絵…
参加させて頂くことができて 嬉しかったです!!
*********
さて,今回のコラムは ロンドンと東京の街の色くらべ第二回。
第1回目では,タクシーやバス,ゴミ箱など
公共の物体で色比べをしました。
第二回目は,その公共物がどんな風に
「街の色彩」 という全体に働いているのかを
建物の色などにも注目しながら見てみようと思います。
「街の色彩」という全体
と言っても わかりにくいですね…
まず イメージで見比べてみましょう。
壁の色,建物の高さ,看板の色,看板の位置などに注目してみてください。
写真①
上がロンドン キルバーンの住宅エリア、下が東京 御徒町の住宅エリア
写真②
上がロンドン キルバーンのハイストリート(ショッピングエリア)、下が東京 上野の町中
建物の構造,高さ,看板の付き方など
色合いだけの違い以上の もっと根本的な,街の構造の違いがあることに気づきます。
ロンドンは建物,また看板の設置の高さや,外壁の色が濃い色でそろっていて
全体的に 濃く強い色の横ストライプのような色の配置になっています。
反対に東京の町並みでは,建物の高さがそれぞれ、おだやかなトーンですが外壁の色もバラバラです。
また,建物の構造上 立て看板がたくさんあり,派手な色が街並の上の方にも見られます。
いわば 下部から最上部まで色の飛び散った,淡く明るい色のモザイクのような色の配置です。
この場では 長くなってしまうのであまり触れませんが,
ロンドンでは行政区ごとに
建物の高さ,外装のリフォーム可能範囲,商店の看板の大きさ,設置場所などが
こと細かく規制されていて,
街並みを統一,保存する意識がとても強いのです。
色に注目して街を見よう,という試み。
でも実際には, 配色だけが全てではありません。
どんな色が,どういった配置で使われているのか
それは建物の高さ形や,看板の色 その大きさと配置など
全体の構図を大きく捉えて 考える必要もあるようです。
最後におまけで,東京都ロンドンの地下鉄の色比べをしてみましょう!
①ロンドンの地下鉄 全9線のインテリアの配色
※データは2009年のもの,調査にはパントンカラーチャートを使用
②東京の地下鉄 12路線分のインテリアの配色
③ 左/ロンドン 右/東京
地下鉄インテリアの配色をまとめ,モザイク上に配置したもの
大分 雰囲気の違う色を使っていることがわかります。
ここでも,暗い,深い色合いのロンドンと,
明るい 軽い色合いの東京 という特徴が見えてきます。
ロンドンの地下鉄は,ポールの色など,日本ではステンレスの銀色のところに
黄色や赤の原色が塗ってあったりするので それだけで大分印象が違います。
床も 黒に近い濃い色が多いです。
こういった,公共の場で使われる色彩の違い。
これは,そこに住む人々の「色彩嗜好」つまり 色の好みが
地理,文化,などの諸条件によって変わるのだということを示唆しています。
それに街の構造の違いが合わさって,
「街の色風景」が変わってくるんですね。
「色彩嗜好」、色の好みの違いに関しては いろいろな論文や研究がでていますので
それらを読んでみるとおもしろいと思います。
個人的には 佐藤邦夫さんの’風土色と嗜好色―色彩計画の条件と方法’(1986)で論じられている
’色のバイアス’についての考え方が 一番納得がいき,
自分の論文でもそれをベースに考察をしました。
それから 街の色彩については,ジャン−フィリップ ランクロというフランスのカラリストの方の本が
どれも写真付きでとても詳しく考察されています。
彼はご夫人といろいろな国,地域の色彩を比較していて,とてもおもしろい研究をしています。
他にもアジア内での色彩嗜好の違いの研究など,興味深いものがたくさんありましたが
また 次の機会にいろいろ書いていきたいと思います。
また長くなってしまいました ごめんなさい!
それでは,また来週。
(今回の街の色彩についてのコラムは,わたしの卒業論文からの抜粋です。
かなり無理をして二回にした関係で 大分説明の足りないところがあり,恐縮です…
ご意見 ご質問などありましたら ご連絡ください!
chihiro.s@hb.tp1.jp)
(ゴミ箱…左上/ロンドン 右下/東京)
見慣れた物も 色彩も
比べてみると おもしろい。
しばらくぶりの更新になってしまいました..お変わりありませんか?
突然ですが ひとつおしらせがあります。
じつはこの夏 日本に帰国する事になりました。
(ロンドンだよりという名前も あとすこし!
でも現地のお仕事は続けられそうなので
ロンドン情報は引き続き発信したいと思っています。)
それに伴い仕事のことや家のことなど 整える事が重なり…悩ましいです
詰めて送るだけなのですが どうも不得意なわたし。
思い出の品を捨てられない質で
全部もって帰れるはずが無いのに
なかなか 物が減りません。
今まで描きためたスケッチや
集めたチラシやらスクラップやら
こうした記録や素材は もちろん手放せません。
紙類 かさ張るし重いのです。
仕事柄 ついて回る悩みです。
ちなみに ロンドンからの帰国の際は
ほとんどの方がクロネコヤマトを使って発送するようです。
そう ロンドンにはクロネコのオフィスがあります。
ピカデリーサーカスの三越デパートの一階、レジの左奥。
航空便と 船便のオプションが選べますが
航空便は一週間くらいで届くのに対し 船便は約3ヶ月。
どこでそんなにかかるのかしらと ちょっと不思議になる数字ですね…
数十ポンドの違いなので よほど箱数が多くならない限りは
航空便を選ぶ方が多いようですが
どうなることか まだ未知です。
***********
さて 私事の話題から始まってしまいましたが
今日は ロンドンと東京の‘色彩風景’についてお話ししたいと思います。
じつはイラストレーターといいながら色彩学が大好きで
個人的にまとめた資料がありまして…
これも「視覚伝達としてのイラストレーション」の一部という事で
ジャンクに載せる事にしました。
発想の転換に…楽しんでいただければ幸いです。
英語で 町並みのことは‘Cityscape’。
これをもじって 町並みの色彩風景を ’Colourscape’ といいます。
街の色彩 というと 皆さん何を思い浮かべますか。
たとえば海外旅行に行って,
「あれ、何だか街が明るい!」
「何だか雰囲気が違う!」
「なぜだかは わからないけれど」
そんな風に思った経験はありませんか。
もちろんいろいろな理由が考えられますが
街の中で使われている色や 配色の種類が
その場所の印象を左右している ということが
かなりあるのです。
毎日生活している場所で,毎日目にする物だから
普段 あまり気づく事の無い その街独特の配色。
そして その配色が好まれる
文化的,地理的背景とは…?
色彩。
気をつけて見始めると
なかなかおもしろい発見があります。
ロンドンに5年住む中 発見したこの街の色
今回は東京の色彩と比較して
2回に分けて すこしご紹介します。
1回目の今日は,
町の公共物に注目してみたいと思います。
街の色を考えるにあたって
色比べをする対象を決定する必要があります。
(なにしろ 街は物で溢れています!)
二つの都市に共通して存在するもの ということで
いくつか選んでいきましょう。
(今回は,建造物以外の物体についてみていくことにします。)
まずは個別の色を比較して
全体像を眺めてみる事にします。
※比べた地域は,東京台東区とロンドン北部キルバーン。
データは2009年のもの,色の調査にはPantonカラーチャートを使っています。
比べたもの…
バス
タクシー
公共電話
看板
郵便ポスト
道路フェンス
信号機
工事現場(ポール、看板、囲い板など)
ゴミ箱
さあ 東京にお住まいの皆さんは
それぞれの物の色,思い出せますか?
なかなか 難しいのでは…ないでしょうか。
順番に見比べてみましょう。
(左/ロンドン 右/東京)
おなじみの色ですが 改めて見るとこんなに違う。
(上/ロンドン 下/東京)
タクシーはどこも鮮やかですね。
東京の方がポップな感じがします。
(左上/ロンドン 右下/東京)
緑の電話はかなり独特です。
ロンドンは赤と青が多い。
(左/ロンドン 右/東京)
通りの看板や住所表示。
東京は区によってプレートの色が違います。
ロンドンはとにかく 白黒+赤が多い。
(左/ロンドン 右/東京)
ポストの色は共通。
日本の物は 心なしか黄色っぽい赤。
みなさん どんな印象を持ちましたか?
全体として
ステンレス/白+やわらかい色彩(黄緑,水色,オレンジなど)の多い東京
という印象があります。
こんな感じになります。
ロンドン=高彩度,低明度,コントラストが強い配色(ex.黒/赤)
東京=中—低彩度,高明度,なじみの配色(ex. 灰色/水色)
ざっくりまとめてみると このように見られるのではないでしょうか。
普段見慣れている物も,他の文化圏と比べてみれば地域性が見えてきます。
次回は 建造物の色彩も見ながら
街全体の色合いと,その違いの背景についても
少し考えてみようと思います。
長くなってしまいました!
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは,また来週。
5月も半ばを過ぎ,ロンドンはすっかり初夏。
この時期には「霧のロンドン」でも晴れの日が多くなります。
ちょっと ぶらぶら散歩でも そんな気分になる土曜日。
渡英以来5年間お世話になっている 友人/戦友と
お気に入りの散歩ルートをぶらぶらしてきました。
先週,二号分の表紙があったので ちょっと一息つくためにも…
どこも人混みを離れたおすすめの場所なので,
ロンドンにお越しの際はぜひ足を運んでみてください。
まずはロンドンの中心 ピカデリーサーカスの近くにある,
Nordic Bakery(ノルディックベーカリー)からスタート。
北欧の家具&食器で統一された店内で,シナモンロールやライブレッドのサンドイッチ,各種ケーキ,おいしいコーヒーなどが味わえます。
スケッチブックに 気ままな散歩の記録
こんな雑多なメモと落書きが あとで作品につながっていきます。
いろいろな言語が飛び交うロンドンのカフェ。
その雑音をBGMに
お気に入りの本を広げて ゆったり午後を過ごしたり
勉強をしたり
スケッチブックに落書きしたり
とてもリラックスできる空間で お気に入りです。
ここから,北西に移動。
ピカデリーからリージェントストリートを上って,
オックスフォードサーカスを過ぎて
Maryleborn(メリルボーン)というエリアへ。
この辺りはちょっと高級なエリアで 落ち着いたたたずまい。
オープンエアのカフェや かわいい雑貨屋さんなどがたくさんあります。
Meryleborn High Street (ハイストリート:メインストリート)にお店が集中しているのですが
この日は一本はずれた裏道を散策。
Maryleborn High Street (メリルボーンハイストリート)の脇道。
水色のウォルクスワーゲンがかわいい。
ロンドンの,この辺りの建物の煉瓦は 赤い。
初めての道を通ると,いつもおもしろい発見があります。
ある靴屋さん。
店内のディスプレイが独特。
天井から 靴がいくつも釣ってあって
その下には 食器やナプキンのセットされた
アンティークのダイニングテーブル。
白いお皿の上には いろいろな靴がペアでおかれています。
窓際には ふしぎな ちいさい ぶたの置物。
(一番上のスケッチブック画像の 右側に描いてある絵です)
残念ながらこの日は閉店していましたが
つい入ってみたくなる 不思議な雰囲気。
こんなコンセプチュアルな 小さなお店がたくさんある
ロンドンの裏通り。
ハイストリートブランドで溢れたメインストリートよりも
刺激的でたのしい。
とにかく シュールな
ぶたの置物。
メリルボーンからさらに北へ行くと,
シャーロックホームズのお話で有名なBaker Street(ベイカーストリート)に出ます。
ロンドナーにすらあまり知られていませんが 駅前にはホームズの銅像もあります。
この駅からすぐ近くのところに,Regent’s Park(リージェンツパーク)という大きな公園があって
この中のバラ園が とにかくこの時期美しい。
ロンドンにいる5年間 欠かさずに訪れています。
この街の 一年の癒し。
今年も香り豊かに咲いていました。
今年の写真ではないのですが…(撮り忘れました)
Regent’s Park(リーゲンツパーク)内のローズガーデン。
この時期 満開。
いろいろな種類のバラ。
わたしはこの色が一番好きです。
もう一つ
この公園のよいところは,たくさんの野生動物がいること。
カモやペリカン ロビン(お腹の赤い スズメのような鳥)
マグパイ(黒い体に黄色いくちばしの 小さい鳥)
リス などなど
それぞれ気ままに うろうろ うろうろ。
特にリスはとても人になれていて,足下までやってきます。
カモのオヤコ。
大きな声で があがあがあと号令をかけて
ひなの行列を引き連れ 去っていきました。
人懐っこいリス。
なんて顔をしているの。
大学に行っている頃,この公園の近くに住んでいた時期があり
当時はよく動物のスケッチをしに来ていました。
生き物や自然は常に変化して いつも新しいインスピレーションを与えてくれます。
公園に来る度
迷ったりしたときこそ 部屋に閉じこもっていてはいけないな,と
思わされます。
週末に小旅行にいけるほどの余裕は
金銭的にも時間的にもないけれど
お気に入りの散歩道を 親しい友人とあれこれ話しながら歩く週末は
また次の週も頑張る気にさせてくれる
すてきな過ごし方だと思います。
さあ 来週も張り切って描きましょう。
ロンドンにも夏が来た。
テムズ川のほとりの広場 ピクニック日和。
皆さんこんにちは。
長い冬が終わり,ようやく初夏を迎えたロンドン。
日中は17−20度くらいあって,日が出ているときには汗ばむほどです。
でも朝晩の最低気温は7度くらいまで下がるので,油断をして外出すると凍えます。にわか雨(シャワーと呼ぶ)も頻繁。
半袖を着て厚手のジャケットをカバンに入れ,ショールを巻いて,折り畳み傘も忘れずに,というのがこの時期のロンドン散歩の必勝法でしょうか。
荷物が増えてかなり悩ましいですね!
そんな気まぐれな天気の中,太陽大好きなロンドナーたちは
広場という広場で日光浴をしています。
週末ともなれば,青空の下 ワインや食べ物やギターなんかも持ち出して
貴重な夏の一日を満喫。水着の人もいます。
なにせ 二週間くらいしか‘夏らしい夏’がないのです…もはや 必死。
この時期になると,屋外の音楽イベントやパフォーマンス,
“チョコレートフェスティバル”“コーヒーフェスティバル”などの物産展みたいなものも増えます。
活動的なハウスメイトたちは毎週いろいろお出かけしていて うらやましい限りなのですが,
わたしは今月急な仕事が多くて自宅兼仕事場にこもりっきり。
今週でようやく今月号分のイラストが全部終わり,この週末はようやく一息…です。
外はいい天気。
いつも修羅場の編集室。
(セールスさんの外見は変えてあります)
わたしの働いている編集社の雑誌は,
編集スペースの論文(教授などに依頼して書いてもらう)の他に
売り物スペースの論文(企業の宣伝論文など)で構成されています。
売り物スペースの企業論文は短くて,見開き一ページくらい。
このタイプのものは,締め切りぎりぎりにセールスさんが契約を取ってきてくれる事があり,
その場合 編集チームは嬉しいのと悲しいので非常に複雑な心境におちいります。
今月は この手の急な契約がたくさんあり…
いずれもイラストレーションが必要で,即日から翌日締め切り。
セールスさんが電話で
「明日までに挿絵いりで編集したものを確認用にメールします!」と
クライアントさんと話しているのが聞こえ,
血の気が引いていくのを感じ,
電話をおく音,椅子の回る音,
「チー,(チヒロは言いにくいので,皆こう呼ぶ)そんなわけだから…もちろんできるよね」
イエス以外に答えはありえないのですから,
正念場と言いましょうか。根性の見せ所です。
でも社員一同力を合わせて,契約成立から24時間以内で確認ファイルを完成させ,
送信完了したときには 何とも言えぬ達成感があります。
そしてクライアントさんからの”FANTASTIC(とてもいいです!)”のお返事が来ると,皆でバンザイ。
激動,修羅場の出版業ですが,
なかなか スリリングで癖になってしまう職場です。
そして手元には 来月号用の18ページの論文。
だ,誰か代わりに読んでくれないかしら…
日本は大寒波に覆われて とても寒いと聞いています。
みなさん 体調を崩したりしていませんか。
先週末は あまりのハードスケジュールにより更新することができませんでした… こんなにずれ込んでしまうとは…
ともかく 一つ締め切りが明けて ほっとしています。
このところ ロンドンは奇妙なほど生あたたかい。
日中は10度を超えることもしばしばです。
冬のスタートが猛烈だっただけに あれれどうしたの,という感じ。
温暖化,というより,不安定になってきているな,という感覚があります。
季節が戻ったり 早く進んだり 洪水 地震 火山噴火
人の手では調節できない事柄が より強い力を持って
頻繁に起こるようになっているような…。
科学も物理もできないけれど
そんなことを不思議に思ったり 心配してみたり。
そういうもののうちの一つなのかどうか, Swine flu(いわゆる豚インフルエンザ)がイギリスで流行っています。
BBCの報道によると,昨年の十月以来,豚インフルを含めたインフルエンザで112人の方が亡くなっているそうです。
BBCウェブサイト http://www.bbc.co.uk/news/health-12184395
日本と違って 街でマスクをつけるという観念が無いこの国。
何度かマスクをつけて外出をしたことがあるのですが あまりに視線が痛いので,むしろ危険を感じて断念しました。
そんなわけで みなさん地下鉄でもバスでもスーパーでも くしゃみをしたり 咳をしたり やりたい放題…。
食べる前に手を洗わない人も多いし,果物や野菜も洗わないで食べる場合が多々(特にケバブなどのファストフード)。
これは 広まるよなあ…。
日本では,電車の車内で物を食べる人 あまり見ませんが
(旅行中の駅弁はともかく。。。)
ロンドンでは かなりの頻度で食べています。
各種サンドイッチを筆頭に,パイ,ケバブ,ハンバーガー,フライドチキン,ポテト,ナッツ,など など など
最近日本食のお店が増えてきたので,お寿司の箱を広げて食べている人も。
そして ほぼ100パーセント 除菌シート/おしぼり的な物は使いません。
こうして車内で飲食している人々を しげしげ眺めていたら,
連続模様のようにイラストレーションにしてみたら おもしろいかもしれない
と ふと思い立って…
今までのスケッチや記憶から ラフスケッチだけおこしてみました。
こうした 日常生活に目を向けたテーマ。個人的には非常に好きです。
ちゃんとした作品にしてみたい。
ロンドンの地下鉄で 食べる人たち。
黙々とスナック菓子を口に運び続ける 乳母車の女の子。
ピクニック気分の母と息子。
周りなんて もうみえない
動くダイニング
日常化された 異常
… …
車内でのお化粧もそうですが,
個人的なスペースと公共のスペースの境目というものが だんだん あいまいになってきている気がします。
というよりも 精神的な個人のスペースが強固になって,物理的な距離をあまり必要としなくなってきたかのような。
これだけ人口が増えて 一人当たりのスペースが狭くなった現代都市の生活では,こういった感覚の変化は不可欠なのかもしれません。
他人の存在は,感じたくないときには,そうしてしまえる。
人混みの中で自分の世界を保つ術なのでしょうか。
ただ, それと公共マナーは別問題な気がしますが……
気象 病気 食べ物 パーソナルスペース
今回はずいぶん 思考をあちこち泳がせてしまいました。
編集無しで できるだけ生の思考回路で書いてみようと言う試みでもあったのですが,
読者さんを引きずり回す結果になって…いないといいな。
来週までには雑誌の新刊ができる予定なので,次回ご紹介できると思います。
それでは皆さん,
手を洗って,うがいをして… 風邪に気をつけてお過しくださいね。
こんにちは。
お正月気分は過ぎて,2011年も通常稼働になっております。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
ロンドンのお正月は 本当に一日だけで
「三が日」という感覚は全く感じられません。
特に「おせち」的なものもなく
新年のありがたみも 日本と比べると ううん,いまいち…。
単にクリスマスの延長と言ったところ。
そんな中でも一応努力をして,それなりにお正月気分を味わうべく
豆を煮たり(大豆 干し椎茸 昆布 にんじん)
筑前煮的なものを煮たり(鶏肉 干し椎茸 にんじん こんにゃく のみ)
出し巻き卵をつくったり
チャイナタウンで買ってきた餅粉でお団子を作り お雑煮にしたり
と いろいろ あがいてはみました。
鏡餅もかまぼこも初詣も無いけれど
そんな有り合わせで 友人と過ごすお正月も けっこう楽しいものだったりします。
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『画材のこと その1−カラーインク』
今週は 少し(熱く)画材のお話をしてみようと思います。
この「画材のこと」は,よく使っているインクや紙の種類,ロンドンの画材屋さんの紹介など,テーマを変えながら不定期シリーズとして書いていく予定です!
さて,第1回目は わたしが最も愛用しているカラーインク。
いろいろな種類のもの(水彩や油彩,アクリルと比べると狭いマーケットですが…)が出ていますが,わたしは主に「ドクターマーチン」シリーズを使っています。
‘Dr.Ph.Martin’s Concentrated Water Color’ というのが正式名称。
ドクターマーチンのカラーインクは主に三種類のシリーズがあって,わたしのよく使う「ラディアント(Radiant)」,フィルムや写真の着色に適した「シンクロマチックトランスパレント(Synchromatic Transparent)」,耐水性の「ピグメント(Pigment)」がでています。
チューブになっている絵の具をよく見かけますが,カラーインクは液体です。
蓋がスポイトのようになっていて,一滴ずつ出して使います。
筆や付けペン,カートリッジ式のペンなどの他,粒子が細かいので(色によって違いますが),エアブラシとしても使うことができます。
紙に向いているのはラディアントとピグメントですが,わたしは殆どラディアント。乾くと耐水性になるので,たまにピグメントのブラウンなどをカラー作品の主線に使うこともあります。
ラディアントは染料インクで,その名の通り鮮やかな発色が最大の特徴。
特にイエロー系やピンク系は,他の画材ではありえないような 弾けんばかりの鮮やかさが出ます。
初めて使った時は 思わず おおっ!! と言ってしまったのを覚えている。。
お気に入りの6色です。実は これだけでも十分描けたりします。
それくらい,混色と濃度差でバリエーションがきいてしまうエライ画材。
ドクターマーチン以外では,ウィンザー&ニュートンのインク(手前)も使います。
箱とラベルのデザインがかわいくて,つい集めたくなる危険なシリーズです。
ゴールドやブロンドなどのメタリックな色がきれいに出て,たまに使っています。
いくつか色を混ぜてもそれなりに鮮やかさをキープするので,混色にも耐えます。むしろ 普通に原色を使うと鮮やかすぎてしまうほど…。
非常に濃度が高いので,ほんの少しでも広範囲を塗ることができます。
また,加える水の量によって同じインクでも全く違う色が表現できるのも奥深いところ。特にブラウン系のゴールデンブラウンなどは,原液だと黒に近く,薄めるとイエローやゴールドのようになり,とてもおもしろい。
たくさん水で薄めて,軽い着色だとこんな淡い感じにも。
こんな魅力的なカラーインクですが,欠点もあります。
それは非常に光に弱いこと。
作品の長期保存はできません。ブルーやイエローが飛んで行ってしまいます…。
そしてビンのままでも,油断していると変色します。これは,起こってしまうと泣きたくなる大事件です。
そんなわけで,完成後すぐにスキャンして使う出版物のイラストレーションなどに主に使われている画材,ということになります。
カラー系の他で使っているのは,有名なのかわかりませんが,ドクターマーチンシリーズの「ペンホワイト(Pen White)」。カバー力が強くて愛用しています。
Pen White
写真はこちらからお借りしました→http://www.docmartins.com/index2.asp
作品の最終修正やハイライトのために白いインクを使うのですが,これがなかなか厄介で,ものによっては下の色がにじんでしまったり透けたりして,きれいに塗ることができません。いろいろ試してみるしかない。
わたしが自分で試した中では,このペンホワイトと,ウィンザー&ニュートン(Winsor&Newton)のデザイナーズガッシュ(Designer’s Gouache)シリーズのパーマネントホワイト(Permanent white) が優等生でした。メインで使う画材によって使い分けています。
今回はカラーインクについてのベーシックなお話だったのですが,気がついたらずいぶん熱くなってしまっていたようです…。
次回の「画材のこと」では,カラーインクを使った着色についてもっと掘り下げてみようかなと思っています。
それでは,また来週お会いしましょう!