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2008/09/08

(前口上)久しぶりに復活します。「誘惑の法則」。

広告業界に身を置く複数の方から、おじさんの身辺雑記ばかりではものたりない。もっと、広告の話を。とのお叱りを受けておりました。ということもあり、復活します。「誘惑の法則」。

とはいえ、現在のネット広告だの、ブランデッド・ユーテリティだの、行動ターゲティングの進化版だのといった、「広告業界内輪話」は、もっと他のアルファブロガーにお任せすることにして、「広告の本質論」「マーケティング・コミュニケーションの基本論」に迫ることをミッションにして、お話を続けることにします。とかく誤解とハッタリが渦巻く某業界内の噂話ではなく、某業界とは関係ない、ふつーの方々にも、「なるほどー、得した」といってもらえるような、「コミュニケーションの誘惑」に関する話材を提供できればと思っています。お付き合いのほどよろしくおねがいします。
(前口上おわり)

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Suika参加性。なぜ生活者を巻き込むことが大事なのか。

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ここを読んでいる皆さんなら、当然ご存知のネット上のサービスをいくつか揚げてみました。これらのサービスに共通しているのは、なんでしょうか。あたりまえですが、「皆さんの個人的な意見が他の人に公開される」ということです。アメリカ式に、SNS(Social Network Service)と呼んでもかまいません。交際の網の目を提供するサービス。だからといって、それで何かを理解したような気になっては、いけませんよ。業界人のテクニカルワードは、その業界の人ばかりでなく、その他の人にも一見わかったような気にさせてくれる力があります。でも、それは、その周辺や背後で本質的に重要な事柄を、「隠蔽」するために、前に出されていることも多いのです。テクニカルワードなんか、覚えなくてもいいのです。日本語でわかりやすく説明してくれる人を探しましょう。それができない業界人は、「それなり」ですから。

※たとえば、今年のカンヌ国際広告祭からよく業界関係者の使っているキーワード。「Branded Utility」。じつは、こんなキーワードが大切だなんて、信じちゃいけません。理由を知りたい人は、まず自分で考えましょう。それでもわからない場合は、私に直接話しかけてください。その際、自分なりの意見や仮説がないものは、返信しませんよ。自分の頭で考えましょう。人の口車に乗らない。私の言葉もまにうけちゃダメですよ(^_^)

話を戻しましょう。ブランドコミュニケーションにおいて、顧客(見込み客含む)の参加性を仕掛けることが大切だ、とよく言われるようになっています。前述したSNSなども活用して、生活者をブランドのキャンペーンに巻き込むことが大事だといわれます。では、なぜ大事なのか?某業界関係の、そこのあなた、よくわかっていますか? 説明できますか?かってに生活者同士をブランドキャンペーンネタで話し合いをさせて、盛り上がってもらえばいい、というのはブー。不合格。生活者の側から考えてみましょう。あなたは、自分の意見をサイトやSNSで表明するのは好きですか?そこに、他の人や企業の人から返事や共感などの返信があれば、さらにうれしいよね。そこです、それ。その自分の意見を聞いてもらえる喜び。実は、これこそが、「参加性が大切な理由」なのです。あなたがうれしいとおもうことは、たいていの場合、他の人もうれしいのです。

インタラクティブとは、相手の話を聞いてあげることから

ここに、あるお話があります。

一人暮らしの都会に住む80歳くらいのおばあちゃんを思い浮かべてください。彼女の日常生活は、近所の整形外科にリハビリに出かけるところから始まります。そこで同じような境遇のお仲間たちと日常的な世間話をするのが楽しくて、ほぼ毎日のように出かけるのです。一人暮らしの彼女は自分の話を聞いてほしいから、苦手な人が時々いたとしても、せっせと通っていたそうです。それが、ある日を境にこなくなりました。そして、半年後彼女は一人自宅でなくなりました。亡くなってみると、かなりの遺産があることがわかります。死別した夫との間には子供もなく、遺書によると、ある30代の男性にすべてを譲るとあったそうです。血縁でもなく、三ヶ月ほど前に知り合ったという男に、なぜそこまで彼女は入れ込んだのでしょうか。

その男が彼女の親族に呼び出されました。一体、彼女になにをしたのか。真面目そうな営業マンはいいました。営業の途中で、たまたま話し込んだことがあり、それからほぼ毎日一時間くらい話をして帰っただけだと。縁側で座って話すことが多く、家の中まで上がったこともないとのこと。親族は、なにか特別な話をしていたのではないかと気になり、問いただします。営業マンは答えます。「いえいえ、特別なことは何も。とにかくよくお話になるおばぁちゃんで、私も田舎の母を思い出しながら、ふんふんと聞いてるばかりでしたよ」そうなのです。おばあちゃんの世間話につきあっていたという理由だけで、この真面目な営業マンは遺産を相続することになったのです。こんなこと、ほんとにおこるのでしょうか。なんだかうそっぽいと思っていませんか。でも、これはれっきとした実話です。実は、ここに、誘惑のコミュニケーションの重要な手がかりがあるのです。

聞き上手を、嫌う人はいない。

これは、当たり前のように思えるかもしれませんが、実は、人を誘惑しようと思ったときには、肝に銘じたほうがいい、黄金法則なのです。人の話をほんとうに真剣にずっと聞き続けてくれる人なんて、実は現実社会には存在しません。あなたのパートナーはどうですか? あなたの話を真剣にじっくりと傾聴してくれますか?そして、「それはほんとうに大変だったね」などと慰めてくれますか? もしあなたのパートナーがそうなら大切にした方がいい。それだけである意味、最高のパートナーなのですから。通常の大人は、そうしているつもりでも、実のところなかなかできないものです。

またまた想像してみてください。あなたがもし、独身の女性で、一人暮らしで、それなりに仕事もバリバリやっていて、結婚願望もあって、でも時間も機会もなく、なんとなく寂しく思うことが増えてきたとして、そこに、こんな男性が現れたらどうでしょう。毎日毎日あなたの話に傾聴してくれて、共感してくれる。慰めてもくれる。あなたは、外見や所得などと無関係に、 その男に魅かれませんか。こんな風にされていると、あなたは大切にされていると実感できたりしませんか。大切にされていると思う相手には好意を持ちますよねー。その後、恋人になり、結婚しようということにもなるかもしれません。それがたとえ、「結婚詐欺師の常套手段」だとしても。そうなのです。

この「ひたすら傾聴する」方法は、相手の好意を獲得するのに、時として、絶大な効果を生む方法なのです。

本質的な欲求としての、承認欲求

人は様々な欲求をもっています。食欲、睡眠欲、性欲、支配欲、破壊欲、所有欲、名誉欲、、。
そのなかでも、「他者承認欲求」というものがあるといわれます。
(他人から)自分のことを認めてほしい。自分を貴重な存在として認識してほしい。単純にいうと、「君はほんとうに大切な人だ」と誰か他の人に言ってもらいたい、ということです。先ほどの「傾聴」という方法は、この本質的な欲求に応えるということなのです。私のことを一生懸命に聞いてくれる人は、私を認めてくれているんだわ。そう、人は勝手に思うものです。それを、浅はかだとか、単純だとか、と判断することは重要ではありません。その欲求は、他の欲求と同じように「切実」だということです。この切実な欲求に応えてあげること。そのための具体的な行動のひとつが「傾聴」なのです。

閑話休題。

この夏もたくさんの少女が、俗に「プチ家出」といわれる、家庭・地域社会からの脱出を試みたようです。その少女たちを食い物にする「出会い系サイト」が犯罪の温床になってるともいわれます。とはいえ、ここでは、その是非はともかく、彼女たちの心理にフォーカスを当ててみたいと思います。なぜ、少女たちは「プチ家出」をするのか。その原因をヒアリングしたTV番組をみていると、こんなものが理由としてあがっていました。

家族が私を大切にしてくれない。親は私を怒るばかりで、期待もしてくれない。家族が自分を人格のある人間として扱ってくれない。親に無視されている。学校で、だれも私を見てくれない。クラスメートには、いぢめられるばかりで、友達なんて学校にはいない。家にも帰りたくない、学校にも行きたくない(というか夏休みだし)・・・。

これを「愛のない、悪い親の元で育った、特殊な女の子に起きる出来事だ」とおもいますか。もしそうなら、あなたは幸せです。
この話を聞いたとき、私は直感としてこう思いました。こうした気持ち、満たされない不満をかかえている人は、世の中に大勢いるのではないか、と。それも、年齢や性別に関係なく。
テレビのインタビューに答える彼女たちのプチ家出の「動機」は、結果的な「不満」の表現にすぎません。そこにいたった「原因」は実のところ見えてきません。家庭環境、学校でのいじめ、そんなところに帰着させるにはどうしても違和感をもちます。
「プチ家出」に彼女たちを追い込こんでいるのは、一体なになのか。なぜ、彼女たちは、家やクラスに、いられなくなっているのか。彼女たちが日常生活に安穏と暮らしていけないのは、なにが欠落しているのか。
逆にいうと、なにを彼女たちにあげることができたら、彼女たちはうれしいのか。満たされるのか。他者にどうしてもらえると、家出をしなくてすむのか。
それを考えることが、大切だと思いませんか。ワイドショーのコメンテイターには、期待できません。 あなたならどう考えますか。

・・・・私は、彼女たちのコメントからこう思います。

ここに足りないのは、実は、親や友達の「愛」、ではありません。
愛がないからといってみんなが家出するわけではないのです。
彼女たちに足りないのは、他者からの、「承認」です。
親やクラスメートという身近な人たちからの「承認」が足りないのです。
わかりやすく言うと、
彼女たちには「あなたが大切な存在である」というメッセージが足らないのです。
「ここにいて好きなように過ごしていいんだよ」という他者からのメッセージが足りないのです。

そう思いませんか。
自分の他愛もない話を、真剣に聞いてくれる相手が足りないのです。
今日こんなことがあったんだよ、こんなことを思ったんだよ。
そんな、他愛もないことだけど、それを真剣に聞いてくれる人。

「愛」を、彼女たちの目の前に見せることは、難しい。
でも「大切なあなたの話をしっかり聞きますよ」という態度は、彼女たちの周りの人が、今すぐにでもできるはずです。

傾聴。それは、(無意識も含めて)他者からの承認を求めている人にとって、強力で、愛のあふれる誘惑の方法なのです。

「参加性が大事だ」というとき、こういう「他者承認欲求」に応えることで、ブランドへの好意や共感を形成するということまで考えてみる。大げさかもしれませんが、人を相手に、その心理に踏み込んだ効果を計算するのであれば、あってしかるべきだと、私は考えます。

こういう社会的、心理的な視点から、SNSやコミュニティ、ブログなどの、コミュニケーション・サービスを見直して、企画していくことも、大切なコミュニケーション企画なのだと思います。

※異論、反論、オブジェクション、共感、賛辞、袖の下、弟子入り、お問い合わせは、お気軽に私までメールくださいませ。

(「誘惑の法則(4) 了)