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2008/02/09

内容<記号 yabai

誘惑を上手くする心構え、今回は少し難しいお話です。

「記号論」の知識のある人には簡単すぎる話でしょうが、そうでない人にもわかっていただけるように書いてみます。

さて、今まで、相手の気持ちを動かして誘惑するための、「コミュニケーション」の方法について、考えてきています。
前回は、コミュニケーションの効果を決めるは、話の「内容」や伝わる「メッセージ」だけではないということでした。
コミュニケーションというとふつう「何を伝えるか」ばかりに目がいきがちですが、好意を持ってもらったり、誘惑されてもらったりするためには、「コミュニケーションの最中での印象/感想」が大切だという話でした。
では、その印象や感想は、何によってもたらされるのか。つまり、誘惑者としてはなにを考えればいいのか。

内容(シニフィエ)と記号(シニフィアン)。「記号の優位性」といえば、「ニューアカ世代」の人にはわかりやすいかも。「ニューアカ」って、どんな赤?という人でも、わかるように説明していきましょうね。

あなたは異性のどんなところに惹かれますか? たとえば、声。あなたの好きな異性の「声」のタイプってありませんか。
話している内容ではなく、声の質。私にも好きな異性の「声質」というのものがあります。初対面でも、声の質や話し方がタイプだといきなりひと目(ひと聞き)惚れすることもあります。

これは、生理的な好みの範疇に入ってしまいますが、誘惑には、こうした「声」とか「雰囲気」とかかなり生理的な反応を意識することが実は大切なのです。とはいえ、俗に言う美声であれば、美形であれば、いいのかというと、そういうわけでもないんですね。
たとえば、テレビ広告の「ナレーション」の声を注意して聞いてみてください。決して、アナウンサーのような、流暢な綺麗な声ばかりではないはずです。擦れていたり、少しなまっていたり、けっこう異質な、気になる声のものが多いはずです。なぜでしょうか。

もっと自覚的に、記号の誘惑力

広告を作るひとが望むことで、共通しているのは、「興味を引き、好意を持ってもらうこと」です。
そのために「声」は大切な「記号」なのです。音というのは、たとえ家庭で他の家事をしていても、強制的に耳に入ってくるものですから。「サウンドロゴ」「BGMの曲」なども含めて、できるだけたくさんのひとに「生理的な誘惑」を感じてもらいたいのです。

要するに、広告とは「誘惑する記号の勝負」、「工夫した記号でどれだけ誘惑できたか競争」なのです。
もちろん、広告を流す側の企業にとっては、伝えたい内容もあります。新しい商品やキャンペーンだったらどこがどんな風に新しくて、画期的なのかを伝えたくて広告をするものです。でも、繰り返しになりますが、「メッセージの内容」だけで興味関心を引き買ってもらえるわけではないのです。そのメッセージの周囲で、場合によってはメッセージの内容以上に生活者に伝わってしまう、広告表現の様々な記号の方に人々は誘惑され、興味を持ったり、好きになったりするのです。だから、その道のプロとしての広告制作者という職業があるわけです。

話を元に戻しましょう。誘惑者は、「話の内容」だけでなく、それ以上に、「聞いている被誘惑者に届く記号群」に、もっと意識的になることが必要だという話です。

被誘惑者に届く記号群の多くは、誘惑者が発する五感に訴えるものです。誘惑者たるもの、自分の姿を綺麗に美しくするだけでなく、声・表情・匂いなど、生理的な効果のあることに、もっと留意すべきです。具体的には、あなたを気に入ってくれるひとに、どこがそそられる?とでも質問してみてください。あほかっ、と吐き捨てられてもめげないように。
声がかわいいとか、舌足らずの話し方がセクシーだとか、コロンがムラムラするとか、見つめるときの目が潤んでいるのがタマランとか、華奢な肩がイロっぽいとか、筋肉のついたふくらはぎが健康的な色気を出しているとか、飛び出した下っ腹が安心感をあたえるとか、、、。
答える人が魅力を感じる箇所も理由も、いろいろあると思います。それを、自分だけの武器として誘惑の際に活用すべきです。

これは、必ずしも、一般的な「美醜」の基準ではないはずです。yukirion
CMのナレーションを、アナウンサーばかりがやっているわけではないことを見てもわかるとおり、標準的で最大公約数の人が不快にならない、というだけでは誘惑はできないのです。あなたにとって大事なことは、誘惑したい相手、すなわち特定の個人が、くらっとくるのに、あなたが使える物の中で、なにが役立つのかということなのですから。

「モテ顔」「美人」は、無意味です

こういうことを考えると、世の中で語られる「モテ顔」とか「モテ服」といった情報が、いかにあなたには役に立たないか、がわかっていただけると思います。
「私は美人(イケメン)でもモテ女(男)でもないから、男(女)ができない」 なんて思っていませんか。それは全くの勘違いです。誤解です。零点です。はっきりいいましょう。アホです。頭が悪すぎます。
そういうことを思い悩んでいてもなにも前進しません。時間の無駄です。そんなヒマがあるなら、意中の人を誘惑するための戦略を考えるべきです。

誘惑できれば、世の中の美醜は関係ないのです。あなたにとって誘惑したい人が誘惑されれば、いいのですから。

大向こうにウケる必要なし

広告だって同じです。デジカメなどの商品の場合、「性能比較」「コストパフォーマンス比較」をしている記事や広告も見かけますが、実はそれだけで物の優劣はつかないのです。性能を気にする人がいたとしても、必ずしも性能ナンパーワンの商品だけが売れるわけではありません。デザインだって、広告だって、影響してきます。
たとえ、物理的性能が劣る商品でも、広告などのコミュニケーションによって、興味を持ってもらい好きになってもらうことによって、性能比以上の「購入満足」だってつくることが可能なのです。
女性が大好きな海外「ブランド」だって、そのコミュニケーションが蓄積した形態だったりするのです。その話は、また、追って。

大切なあなたが誘惑するのですから

ということで、相手の好みを知り、そこにあなた自身がすでに持っている魅力を自覚的に活用することで、あなたの誘惑は今まで以上に成功率を高めるはずです。相手の好みがわからない? とりあえず、自分の武器をぶつけてみましょう。その反応を見て、本格的なアプローチ方法を考えましょう。

あなたが日々見ているテレビコマーシャル。実は、事前にテストしていたりするのです。このナレーションは家事をしていても気になって覚えるか。この音楽は記憶に残って覚えられるか。などなど。
小銭で買える商品でさえ、こんな風にコミュニケーションに自覚的です。お金では変えないプライスレスのあなたが、だれかに気に入ってもらうためには、もっともっと自覚的にコミュニケーションをして、どこがおかしいのでしょう。

さらにいろんなことに自覚的になることで、誘惑はさらにうまくいくかも、という話はまだまだ続きます。

2008/02/05

※註:以下はフィクションであり、固有名詞・人物・団体名は一切現実と無関係であることをあらかじめお断りしておきます。

-いきなりですが、旦那はメーテーしてますか?
daruma

時々は。過去に何回かは。年に数回かな。よく酔うけど酩酊までは行かないかな。それがなにか?
はい、ありがとうございます。そうですよね、アルコールの過剰摂取で、肉体的な制御もままならない状態になんか、そんなに頻繁にならないもんですよね。でも、それって、ほんとうですか? 今は、どうですか? え、酩酊してたらこんなもの読めないって。そうですね、失礼しました。でも実は私のことなんですけどね。近頃ちょっとね、不安なんですよ。

思い出すと、物心付いてから数十年間(って結構生きちゃいましたねぇ)、そして今も、ずーっと酩酊しているのではないかと、思ってるんですよね。酩酊状態が続いてるって言うんですか。え、それってへんじゃないか、酒も飲まないのに、嘘つくんじゃない、って。そうなんですけどね、嘘じゃないですよ。ホントなんです。もっとも、アル中じゃないんで、ずっと酔っぱらっているというのでは、ないんですがね。だからこそ不安なんです。呑んでもいないのに、酩酊だなんて。ねぇ、旦那。

何でそんな風に思うのかって? それを説明しないと、ですね。いつだったか気がついたんですけど、酩酊したときと同じような「感じ」が、しらふの時でも全然消えてないんですよ。だから、ずーっと自分は酩酊したまま生活しているんじゃないかと。これ、すごくまじめに思っているんです。でね、正直、すこし心配になっているんですよ。聞いてもらえますか?

-酩酊すると、世界中が本屋になるんです

普通は、お酒の飲み過ぎで、酩酊するわけじゃないですか。
飲み過ぎて、酔っぱらいすぎて、眼もあけていられなくて、ふらふらと千鳥足だったりして、ひどくなるとむかむかと気持ち悪くなってきて、消化器官からすべてのものを外部に排泄したくなって、すぐにでも横になって眠りたくなったりするじゃないですか。他のことはほとんどわからないのに、「嘔吐に適した場所」「排泄が可能な場所」「横臥しても汚くない場所」のことばかりが頭の中でぐるぐる回ったりして、でも、それも意識がなくなって、気づくと、植え込みに顔を突っ込んでいたり、電車の床にしゃがんでたり、駅のホームでベンチにねてたりして・・。ところどころしか外部のことがわからなくなって・・。

もちろんね、個人差はあるんだ、とは思うんですよ、こういう時の感覚も。
でも、この過剰な睡眠欲求、嘔吐欲求、排泄欲求に支配されながらも、実は意識の方では、こんな風に思ってたりしませんかねぇ。

あーあ、こいつ、なんとか家まで、連れてかえらなきゃ。
ほら、目を開けて。ほら、前を見て。ほら、立つんだ,ジョー。

酩酊状態のぐでんぐでんの男、区別するために「ジョー」でも何でもいいんですけど、その男の肉体を、一メートルくらい上から眺めながら、あきれている「自分」がいませんか。「私」ですね、そこから見ているのは。
で、旦那はどこかって? そんなこたぁ知りません。だから今話てんのは「ジョー」と「私」の話ですって。旦那、ついて来てますかぁ? ちゃんと聞いてくださいよ。

私、酩酊すると、幽体離脱するんです。

これって、文字にしてみると、やっぱりちと「へん」ですね。アキバのメイド服の女の子あたりが言うと、なんか、ちょっと神秘的で、ちょっとカワユかったりします? 旦那も口に出していってみてください。いやぁさすが後家殺し!  って、スリッパで叩かなくてもいいでしょう。いてててて・・・。

私、本屋に行くと、便意をもよおすんです。

これ、さっき旦那の家の壁に落書きされてたんですけど、これって、同じって思っちゃいました。さっきのと同じ響きがしますねぇ。なんか、いい感じですねぇ。なんか、真実っぽい匂いがしてきました。すこし楽しくなってきましたねぇ。 え、ならないって。どうしてでしょうねぇ。

で、私の問題はですね。これが酔っぱらったときだけでなく、しらふの時でも同じだということなんですよね。便意を催すのは本屋にいるときだけじゃないでしょ。それとおなじで、幽体離脱も、酔っぱらってるときばかりじゃないんですよ。朝起きたばっかりの時から、どこかの布団でねるときまで、ずーっとそうなんですよ。ほら、今も、一メートル上から見てるでしょ、私が。 指さしたって、見えない? おかしいなぁ。 ほらっ、あっ笑ってら。あはは。

-自己同一性ってほうが、おかしくないですか

旦那、話は変わるんですけどね、、、よかったって、なんですか。
英語でね、recognize という動詞があるんですわ。辞書をひくと「認識する」とか書いてあるんですけどね、日本語のニュアンスとは、かなりちがうみたいでねぇ。

(酩酊者意訳)
recognize: ある物体を知覚した後、既知の特定対象と、同一であると理解すること。その一連の情報処理活動。わかりやすく言うと、町中で知り合いの人を見かけて、あっ千恵ちゃんだ、と気づいて、即座にデートに誘うこと。
※誘うのは実は別のことなんですけどね、誰だかわかんないとその後いろいろ面倒ですからねぇ。

旦那聞いてます? レコグナイズを説明してますよ。
人には五感ってものがありますよね。その視覚、聴覚、触覚などで対象を捕捉し、頭の中の知識と比較させて、あっこれは○○ちゃんだ、と情報に意味を付加する。言い換えると、センサーからの情報を知識データベースに連動させて、価値のある情報としてネットワークをつなぎ直す。それが、recognizeという動詞の働きなんですよ。英和辞書などには「(・・であることが)わかる」なんてかかれてますけどね。普通の人が社会生活を送るにあたってはほんとうに基本的な、だからあまり意識しない能力なわけです。わかりましたか?

この認識すべき対象が、千恵ちゃんとか東京タワーとかだと、まぁ間違いもしませんし、いいんですけどね。その対象が、「私」であるとき、話は急にややこしくなるわけです。・・・って、旦那、おきてますか?ねぇねぇ,質問しますよ。寝ないでくださいね。

旦那は、鏡を見るのって好きですか?鏡に映る人物を、自分だと、信じてますか?singer
自意識に目覚める思春期の坊主じゃないんで、恥ずかしいんですけどね。思い切って白状すると、私は、いまでも鏡が嫌いなんですよ。自分の映っている写真や自分の録音された声もね、正直見たり聞いたりしたくないんですわ。堪えられんのですよ。そんなに自分が嫌いかって? そうじゃなくて、どうしても違和感があるんですわ。そこに映っている顔や聞こえる声が、どうしてもそれを、認識しようとしている「私」と同じものだと、思えないんですよ。

酔っぱらってつぶれてる自分、あ、ジョージでしたっけ、旦那物覚えがよくて、さすがです。あ、そのジョージに声をかけている、一メートル上の「私」と、その写真とか声とかをマッチングさせることに、すっごい違和感があるんです。違和感のもとって、誤差もしくはエラーみたいなことかもしれませんがねぇ。いえいえ、あんまりにも私の顔が不細工だから、とかじゃぁないんですよ。ただねぇ、なんか、気持ちよくマッチングできんのですわ。
そりゃ、自分の顔も声もいままでいやというくらい見たり聞いたりしてきましたから、頭の中のデータベースにあるんです。それと一緒だというのはすぐわかるんですけどね、根本的にそのデータと「私」がひもづけられるのがいやなんですね。だって、そのデータって、ジョンのもので、私ではないんですからねぇ。え、旦那、なんかへんですか。そうですよね、私って普通じゃないんでしょうねぇ。物体としての「ジョン」と、認識する「私」を、無条件に結びつけられんのです。

いいんですよ。おかしいのはわかってますって。そういうところ開き直ってますから。
所詮、私は、本屋に行くと、どこでも、幽体離脱する体質、いわゆる、HDY体質なんです。え、聞いたことない? 実は、今年これからはやるんですよ、旦那。はやらせるためにも、言い放ちますよ。立ち上がっていいですか。腹から声を出してぇ、、。

私はぁ、1メートル上からぁ、自分を見下ろすぅ、「上から目線」のぉ、
おまけにぃ、HDY体質のぉ、酩酊オヤジっ、 どぅえーっす。

あぁあ、やっぱり嫌われそうだなぁ。なんでかなぁ、上手くいかんなぁ。すべては「認識エンジン」のバグがわるいんだ。「私」と入力した途端に暴走するようなバグってさぁ、ほんとにどうよ。といっても、バグはバグ。ある程度あきらめなきゃなぁ。パーフェクトなプログラムなんて存在しないし、バグとは上手く付き合っていくしかないですよねぇ、旦那。ぐでぐでの肉体のポールと、どう付き合うかということですものね。どこまで行っても、私の人生ですからねぇ、余生をどうやって楽しくするのか。それだけですもんねぇ、考えなきゃいけないのって。くすん、くすん、、、。

えっと、なんの話でしたっけ。そうそう、ほら、自分で言うのもなんですが、私ってこんな風に、酒も入らないのに酩酊してるみたいじゃないですか。今後のことはちょっと不安ですけど、ま、なんですわ、世界中を本屋だと思えば、気分も楽になりますから。
どこでも便意かって? ちがいますって。DY、どこでも、幽体離脱ですって。でもね、間違っても、「僕って何?」とか、「頭の中の悪魔がやれと言った」とか、ほんまにおこったろかみたいな、つまらないことは決して言いませんから。ご安心ください。ただ、HDY体質なだけですから。
旦那、旦那。エッチでいーわい、じゃないですから。それは旦那でしょう。もぅ、お盛んなんだからぁ。あ、これからいらっしゃるの?なんだ、早く言ってくださいよぉ。お邪魔はしませんよ。

今夜も長っ尻になってしまって、すみません。ほら、リンゴ、帰るよ。それでは失礼いたしやす。

と帰ったふりして、私ちょっとそこの天井の隅の方から、拝見させてもらいましょう。あはは。嘘ですよ。帰りますよ、帰ります。ではでは。

(某酩酊者の日乗、おわり)