鼻風邪は、思想なんかよりずっと多くの苦痛を与える。
と名言を残したのは、「にんじん」を書いたフランスの作家・ジュール・ルナール。

それを現在、嫌というほど痛感している中山小百合です。
季節の変わり目ということもあり、風邪を引きました。そりゃぁもうひどく。
電話で話すと「誰!?」とびっくりされるくらい声は変わってしまい、
ただでさえ回らない頭は、空回りしっぱなしで動くのもままなりません。
日本だったら病院にいけばいい話ですが、なんとなく病院にいくのは抵抗がありました。
というのも、こちらの薬に関するあまりよくない話を聞いていたから。
日本の薬は、体が通常持っている免疫力を最大限に引き出す効果があるらしく、
極力自分の体の力で病気を治すように作られているそうで効き目としては弱めにできているそうです。
それに対して、欧米の薬は、免疫力など関係なしに薬の力だけで病気を治そうとします。
なので、効き目も強め。
実際、効き目が強すぎて薬を飲んで逆に気持ち悪くなった日本人が回りに何人もいたこともあり、
もう完璧に及び腰な私。
とはいいつつも、風邪があまりにもひどく、日本から持ってきた薬も切れてしまい
そんなことを言ってられない状態に。
同じ寮の子から少しずつ薬を貰って援助してもらっていましたが、
いくら日本の薬といえども、いくつも違う種類の薬を飲むのは体に悪そうだし、
何度も貰うのも心苦しいものがあります。
ということで、観念して留学センターに駆け込み、病院を紹介してもらおうと試みた私。
これこれしかじかで風邪引いちゃったので病院を紹介してください、
と言った声があまりにひどい声だったようで、
最初無表情だった担当のお姉さんは、声を聞いたとたん親身になって、
「向かい側の校舎の一階にとりあえず行きなさい」とのアドバイスをくれました。
なんでも健康センターがあり、看護婦さんが常駐しているとのこと。
日本と同じようにフランスにもどこの学校にも健康センターがあり、
薬をくれたり、診察をしてくれるそうなのです。
そういえば、早稲田にいた時もお世話になったなと思いながら
フラフラしながら行って見ると、でっぷりとしたおばちゃんが
奥のほうの「infirmière」(看護婦)と書かれたドアの前に私を連れていき、
乱暴にドアを叩いて、中のこれまたでっぷりしたおばちゃんに
「日本の子がひどく風邪引いてるみたいなのよね。見てあげて頂戴」とけだるそうに伝えてくれました。
中から出てきたナース服ではなくごく普通の服を着た看護婦さんらしいおばさんは、
「先客がいるからとりあえず、あんたそこで待ってなさい。
どれくらいかかるかわかんないけど」と指示を出し、私を寒い廊下に残し、
また部屋の中に入っていきました。
フランス人のことだから、とりあえずすんごい待つんだろうな、
とうんざりしつつ、為す術がないのでそのまま廊下に待機な私。
廊下には、「栄養をきちんと取りましょう」
「避妊はしっかりしましょう」「エイズには気をつけましょう」的な
健康を促すパンフレットが置いてありました。
性病関係のパンフレットが多かったのは、
この国のアノ回数が世界で一番多いからでしょうか。
朦朧とした頭の中でフランスらしいなぁと思いました。
しかしながら、待てども待てども看護婦さんは出てきません。
一時間ほどしたとき、
「ちょっと大事な話してていつ終わるか分からないのよね。
これは終わらせることができないわ。
今日はきっとあなたを見る余裕はないと思うんだけど、まだ待つ?」との驚愕の返答が!
一時間待ってそんな応対ですか!と卒倒しそうになった私。
それは困ります!私だって苦しいんです!
しかし、ここで「そうですか」とスゴスゴ引き下がってはいけません。
フランスで大事なことは、とりあえず言ってみること。
いやね、のども痛し、薬が欲しいんですよ、
病院にいきたいんですけど紹介してもらえませんかね、とごねてみると
嫌々ながら部屋に入りなさいと言われ、
なんだかんだ熱を測ってくれたり、のどの中を見てくれたりと対応はしてもらえました。
部屋の中には、泣いてるフランス人の女の子がいて確かに事態は深刻そう。
その女の子の対処を早くしたかったのか、
看護婦さんはこれを飲みなさいとバファリンのようなよくわからない薬と
着色料で真っ赤なトローチのような甘い飴玉と
もっと薬が欲しいならここに電話してもらいなさいと病院のパンフをくれ、
私を部屋を追い出しました。所要時間5分以下!
「お大事に!」の声に心が篭っていなかったのは言うまでもありません。
こうしてタライ回しにされた私は、為すすべもなく、
私が待ってた時間ってなんだったんだろうと思いながら
また留学センターに行き、予約を取ってもらいました。
「16時ですって。お大事にね」といって
地図まで調べてくれた留学センターのお姉さんの笑顔が
優しくてちょっと泣きそうになりました。
日本に帰ったら私もこのお姉さんのように
留学生に優しくしてあげようと心から思いましたね。
体調が悪いときの優しさは、身に染みこみます。
こうして遠回りながら無事に病院の予約が取れた私。
実際に病院に言った様子は後半に続きます!