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2009/02/05

大阪の梅田から少し東に入った場所に、中崎町という土地がある。ここは近年、関西の若者の間で脚光を浴び始めた場所だ。
もともとは、長屋や町屋が多く立ち並ぶ下町だった。2000年頃からここに若者たちが集まりはじめた。アートや演劇、舞踏、映像、写真、音楽、建築、文章。何かを作りたくて、そしてそれを発表する場を持ちたくて、そんなウズウズした衝動を抱えた人たちが集っていった。
そうして今、この中崎町は、昔ながらの下町と、それをアレンジした若者たちの店や空間が絶妙に混ざったエリアになっている。

この街を見て、少しだけ懐かしい感覚がした。それは、同じく大阪のアメリカ村を思い出したからだ。
1969年に日限萬里子が、それまでは倉庫街だった場所に一軒の喫茶店「LOOP」を始めた。それがきっかけで、アメリカ村は大阪の若者文化を代表するスポットにまで成長した。彼女はその後、アメリカ村に隣接する堀江にもその事業を広げ、同じく“堀江”というエリアブランドを浸透させた。
私は、今の中崎町に、当時のアメリカ村に似た変化の香りを感じている。
もちろん、一律に同じとは言い切れない。それぞれにはそれぞれの特徴や抱えている問題があり、同じひとくくりにしてしまうのは問題があるかもしれない。
だがそれでも、それまでは若者に縁がなかったような町に、一つの革命が起こり、人が集っていく様は、やはり類似の気配を感じさせた。
それでは、アメリカ村の「LOOP」に相当するものが、中崎町にはあるのだろうか。
ある、と思っている。
「天人(あまんと)」というカフェがそれだと、勝手に思っている。

「Salon de AManTO 天人(あまんと)」というのが、その正式名称だ。
8年前、一人の男が中崎町で、カフェを作り始めた。
廃材を利用し、自分で自分の作業工程を録画した。この“空家再生パフォーマンス”は1000人を超える人の協力を集めることができ、そしてカフェ「天人」は完成した。
その後、同じように中崎町の魅力を知り、集まってきた若者たちが店を作り始めた。長屋を大学建築学科の卒業制作でカフェに改装し、そのまま営業を始めた「R Cafe」など、たくさんの個性を持つ人たちがこの町に集いはじめる。
そんな中、天人もこの中崎町で店舗を拡大していく。本屋を作り、ラジオ局を作り、ついには演芸場も作ってしまった。
「天劇キネマトロン」もまた、天人の人たちが作り出したそんな空間の一つだった。

 

その時私は、カフェ「天人」にいた。そこで、映像の専門学生たちの映画製作の打ち合わせに顔を出していた。
格安のコーヒーをすすりながら、熱い打ち合わせに耳を傾ける。そしてふと店頭でもらったチラシに目を通した。その地図に「天劇キネマトロン」と書かれていたのに気づいた私は、思わず店のスタッフにたずねていた。
「この天劇キネマトロンというのは、映画の上映会場ですか?」
「そうです。うちの天人が経営しているんですよ」
私は以前、この「天劇キネマトロン」という名前を聞いたことがあった。前回インタビューした劇団「DRAMATiC STATiON」のメンバーからだ。
もと彼らが私の家にバー用品を受け取りに来たとき、出演者の一人が教えてくれた。その人は、自分がその天劇キネマトロンを手伝っていると語った。そして、映像の専門学生を取材していると話した私に、「ぜひここで上映してあげてほしい」と言ってくれたのだ。
そんなやり取りを思い出しながら、私は天人のスタッフに、「天劇キネマトロン」への道筋を聞いた。
テーブル席では、学生たちがロケ地の選定やスケジュールの調整、演出の考察などで会議にふけっている。そこに、
「ちょっと見に行ってきます」
と一声かけて、私は一旦「天人」を出た。

  

「天劇キネマトロン」は、「天人」からほど近い場所にあった。
外観は、すごく古びた長屋だった。太平洋戦争の空襲を免れた中崎町には、こうした家屋が無数に残っていた。「天劇キネマトロン」もそうした古屋を改造した店舗の一つなのだろう。“空家再生”をうたった「天人」ができてから、そんな店舗がこの街には多くできつつあった。
しかし、入り口がわからない。「天劇キネマトロン」と書かれた案内板は見つけたが、奥にはただ長細い通路が続いているだけだ。勇気を出して入ってみると、左手に窓があって、その奥から明かりが漏れていた。ちらっと目に入ったのはたくさんの酒瓶のシルエット。ここは上映会場ではなく、バーがメインなのだろうか。そう思った。
さらに奥に行くと左手に180度折れて、そこに
「自主映画上映会場 天劇キネマトロン 店内にございます」
と書かれていた。バーの店内に会場があるのだな、と気づいた。少し、ゾクゾクした。隠れ家や秘密基地に迷い込んだような、そんな感覚になった。
「いらっしゃい」
店内では、自分と同じような年頃の男性が迎えてくれた。彼に会い、このバーと「天劇キネマトロン」について、いくつか話を聞いた。

011.jpg

自主映画上映会場「天劇キネマトロン」
http://amanto.jp/tengeki/


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Comment & Trackback

「Salon de AManTO 天人(あまんと)」!!

こんなに素敵かつワクワクするような場所が中崎町に
あったとは。。。!!
大阪在住の頃に知りたかったです。
この空間でどんな化学反応が生まれていくのか・・・
次回が楽しみです。
(そして大阪に行きたいです。。。どうにかして出張したい、、苦笑)

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