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2009/06/26

先週末から1週間ほど、台北のうだる暑さから逃れ、台湾南部の玉山國立公園内の鹿林(ルーリン)山の山頂にいる。○鹿と煙と天文学者は高い所が好きだと言われるが、まさにここが鹿○山である。鹿山天文台は、1998年に國立中央大學が建設した天文台である。2002年秋には、台湾最大の望遠鏡である口径1メートル望遠鏡が完成し、2003年より一般に公開され、公募で採択された課題研究の観測が開始。延べ20ヶ国以上の国々から研究者が訪れている。また、Taiwan-America Occultation Survey(TAOS)の口径50cmロボット望遠鏡4台も設置され、掩蔽による太陽系外縁部天体(カイパーベルト天体)の観測も行われ、幾つかの大きな成果がこの天文台より生み出されてきた。今年最も明るくなった「鹿林彗星(Comet C/2007 N3 (Lulin)」は、我々のグループのサーベイで発見された彗星だ。口径2-m望遠鏡どドームも新たに建設中である。

LulinMap鹿林天文台

國立中央大學から車で約5時間。駐車場から更に徒歩で20-30分ほど登ってようやく、標高2862メートルの天文台に到着。昨年はここを3回訪れ、7月の滞在中に巨大な台風「カルマエギ(KALMAEGI)」の直撃を食らい、100年に1度の大雨(約1000mm)で、巨大な土石流が発生し、帰路を失った小生らも天文台で4日間孤立した。厭な予感がしていたのだが、今回も台風3号「リンファ(LINFA)」に襲われた。幸い2日間の暴風雨に襲われただけで済んだが、台湾の台風は発生してすぐにやってくるので、日本の台風の威力に比べると遥かに強力で侮れない。毎回台風が近づくと、国民の休日が発令されて、自宅待機となるほどだ。

MilkyWay-1

さて、台風が去り、念願の星空に巡り会えた。ここは、北回帰線のほぼ真上。緯度でいうとハワイ諸島とほぼ同じであり、南天の宝石「南十字星」も楽に見えてしまう。日本からは見えない南天の天の川も、ここでは天高く登る。観測のルーチンを設定して、漆黒の闇夜に出ると、息をのむような天の川が龍の如く天高く立ち昇る。銀河中心から遥々3万年掛けてやってきた僅かな光の響宴が、束となって台湾の鹿林山に降り注ぐ。大袈裟ではなく「天の川が眩しい!」。

MilkyWay-2銀河中心の円盤が大きく広がっているのが肉眼でも分かる。

しばしの「天の川浴」を楽しみ、再び望遠鏡制御室に戻って観測を継続。今回のターゲット(小惑星)は、天の川の近くにあり、最初は見つけるのも一苦労だった。天の川の距離に比べると、小惑星なんてたかだか数億キロメートルと非常に近いなぁ、などと考えつつ、淡々とコンピュータを通して、望遠鏡をコントロールして観測をこなしていく。ようやく天候に恵まれ、初めて分光観測(光を虹色に分けて組成などを調べる)を遂行できたので、試行錯誤しながらの観測だったが、晴天夜2日目には自分なりの観測ルーチンを確立して、ずまずのデータを取得できた。

LOT-2

観測中の望遠鏡ドーム内部と制御室で観測中の小生。技官が観測を手伝ってくれる。

こんな山中だと、色々と不便もあったりするのだが、人間は美味いものを食べていれば居心地が良いのだと思う。鹿山天文台では、4名の原住民が働いており、1週間交代で2名が滞在しながら、インフラ整備や台湾料理も作ってくれる。彼らの手料理が、また美味い。更に今回は、マンゴー、ライチ、パイナップルなどが花を添え、食後のデザートにも大満足であった。

晩飯ある日の晩飯。

夜空が白む頃に観測を終え、校正データを取得して外に出ると、鹿林山よりも遥かに巨大な山系が朝日を背に鎮座している。台湾最高峰、標高3952メートルの玉山(ゆいさん)である。新高山(にいたかやま)と言った方が日本人には馴染みがあるだろう(真珠湾攻撃のGoサインの暗号にも使われた)。日本統治時代に、明治天皇により「新しい日本最高峰」の意味で新高山と名づけられた。台湾の険しい山岳路の多くは、日本統治時代に開拓され、至る所に和名が残っている。富士山級の山が、九州程度の台湾島に20座もある台湾は、まさに山大国である。山登りを好み、日本のアルプスやスイスのマッターホルン、スロベニアのトリグラフなどの世界中の山々を登ってきた小生の今年の目標は、あの「新高山」である。

朝焼玉山玉山東峰(左;3869 m)と主峰(右;3952 m)。

天の川の光と台湾の山々から鋭気をもらい、これから下山 & 長距離ドライブだ。7月5−10日に観測のために再びここを訪れる。

2009/06/26 03:56 | 台湾, 天文・宇宙 | 1 Comment

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テレビで長崎原爆の話をしていて、確か 何かの日だったような・・?で、思い出しました!おめでとうございます。これからも お星さんの情報いっぱい知らせて下さいね。それにしても、嘘のような天の川、あんなに見えるんですね。ほんと、龍のようです:)

Posted at 2009.08.9 2:15 PM by nanahasi
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