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昨日は、東京大学の中須賀真一教授が國立中央大學の大空所(Space Science Institute)で講演されたので、天文所(Astronomical Institute)のコロキウムをさぼって、出席してきた。
中須賀真一さんと言えば、日本の超小型衛星のパイオニアとして有名である。超小型衛星(nano Satellite)とは、重さが1kg以下の衛星。制作コストも時間も、打ち上げ費用も全て超安価な次世代の衛星だ(参照; JAXA宇宙航空研究開発機構インタビュー「中須賀真一〜超小型衛星による宇宙開発への挑戦〜」)。講演後は、台湾の学生からも質問が飛び交い、随分と興味を持っているようだった。電脳王国・台灣なら、超小型衛星や搭載機器の制作は、まさに打ってつけの學生プロジェクトのような気がする。
教授陣が中須賀さんと晩飯を食べると聞いたので、ご同行させて頂いた。台湾人は客人をもてなすのが得意なので、必ず豪華で美味いものが待っている (客人と客人をもてなす我々の分も全て大學が支払うので、金銭の心配も無用)。大空所の所長の車で到着したのは、「中壢・麗宴」。結婚式披露宴と、ビュッフェ・レストランがある超大型の施設で食べ放題。台灣のビュッフェは初めてだったが、デザートに至まで品揃えが凄まじく多く、そこそこ味も良いのに驚いた。
さて、中須賀さんとは、初めてお会いしたが、実は意外な繫がりが幾つかあることが分かった。
- 2003年にロシアのロケット「ロコット」で打ち上げられた中須賀研一号機の「VI-IV(サイ4)」といっしょに、チェコ初の衛星「MIMOSA」も打ち上げられた。現場で中須賀さんといっしょに作業をしていたチェコ人のラデック・プレスティーと小生は、2003-2005年のチェコ滞在時には毎週いっしょにサッカーをして、ビール飲む仲間だったので、サイIVのことなどは聞いていた。また、小生がチェコにいる時に、中須賀研の超小型衛星の利用に関するアンケート調査に応えて、「キューブサット物語」をチェコに送って頂いたこともある。
- 2005年に神戸大に着任するため日本に帰国した小生は、半年間も家が無く、JAXA宇宙科学研究本部(ISAS)に寝泊まりしながら、小惑星探査機 「はやぶさ」の運用とデータ解析に明け暮れた。中須賀研でサイIVの学生プロマネだった津田さんは、ちょうど宇宙研の助手に着任したばかりで、「はやぶさ」ミッションでいっしょに戦った同士である。
- 中須賀さんが現在取り組んでいるミッションのnano-JASMIN計画の天文台側の中核人物の矢野太平氏は、小生が天文台時代に同じプレハブで、色々と悪さをしていた仲だった。
- 打ち上げ失敗の苦難を乗り越え、超小型衛星を成功させた日大・航空宇宙の小型衛星「SEEDS」の担当者の宮崎さんと小生も古くからの付き合い。小生が日大・航空宇宙在学時に留年した時に(JunkStage記事参照)、日大に赴任してきて以来の知り合いで、今でも時々お会いする。SEEDSは今春、インドから無事に打ち上がった。
- 今回、中須賀さんの講演を企画された大空所 の小山孝一郎客員教授(元・宇宙研教授)は、2001-2003年の小生の宇宙研時代に、宇宙科学研究所・高校生体験学習プログラム「君が作る宇宙ミッション(きみっしょん)」の立ち上げを、全面サポートして頂いた(現在でも「きみっしょん」は宇宙研で継続実施されている)。
中須賀さんは、とっても気さくな情熱人。超小型衛星を通じて學生が学ぶマネージメントは、「Time, Human Resources, Cost, and Risk」だそうだ。基本的に、宇宙研(ISAS/JAXA)のプロのミッションで行われているマネージメントと同じである。超小型(安価)だからこそ、失敗も許されるので(Cansat衛星の場合)、學生を鍛えるのには最適なのだそうだ。実際に、中須賀研から巣だって、第一線の宇宙ミッションの世界へ羽ばたいて行った学生達がいるので、成功している証拠だろう。どうやって學生をトレーングしているのか聞いてみたところ、学部2回生の時に3ヶ月間の実習。3回生の時に空き缶を使った衛星Cansatで修行を積み、更にその中から選抜された學生が実際に宇宙へ行く超小型衛星プロジェクトに関わる卒業研究に着手するとのこと。修士や博士課程の學生が、下の面倒も見るというフィードバックもうまく働いているので、研究室の資質が受け継がれているそうだ。2〜3年で卒業&就職で入れ替わるため、この期間で完結するミッションという意味でも、超小型衛星は教育の目的を果たしている。現在は、教育だけでなく、別会社「空庵」も立ち上げてジュース缶サイズの衛星のバス系の販売も行っている。また、来月には、20cm角サイズのPRISM望遠鏡の打ち上げや(プリズムという名前だが分光器は積んでいない)、国立天文台との協力で製作中の位置天文衛星の小型版「nano-JASMINE」や、宇宙で多目的の風呂敷を広げる風呂敷衛星などの設計も行っている。とにかく、色んな構想を打ち立てて、それを実行しているところが説得力もあり素晴らしいと思う。そういえば、超小型衛星のOSに「iTRON」を使っているとのことだが、これって、あの「トロン」の進化型OS?
個人的には、流星群や大火球をモニタするCansatを複数打ち上げて、地球へ落下する宇宙物質を全地球規模でモニターできたら面白いと考えている。現在、我々(代表; NASA/SETIのピーター・ジェニスキンズ博士)は、ASIMA(アステロイド・インパクト・アナライザー)という低軌道衛星計画をNASAに提出したところだ。メインベルト小惑星、短周期彗星、エッジワースカーパーベルト、オールト雲など、太陽系(あるいは太陽系外)の各所から地球軌道へ飛来する小天体(彗星や小惑星)から放出されたダストを調べ、その天体に直接行かなくても地球大気に突入するダスト(微小隕石)の流星発光を分光器を通して調べることで、飛来した物質の成分(有機物・炭素や金属化合物)を明らかにし、間接的なマルチ小天体探査を安価に行うというのがコンセプト。地球大気を巨大な望遠鏡にみたてて、宇宙から地球を見下ろしながら天体観測を行う。しかし、ASIMAは分光に特化しており、更に全地球を同時にモニタできる訳ではない。隕石になるような大火球(ボライド)を監視する「流星観測・空き缶衛星編隊(Meteor Monitor Formation Cansats)」を組めれば、科学的な価値を十分に引き出せるアイデアは既にある。
中須賀さんは、既に台灣をなかり満喫されたそうで、初来台の氏曰く「台灣・最高!!」と大満足のご様子だった。明日の帰国のため、台灣新幹線で台北へ戻られた。今回は、研究・開発の話はできなかったので、今度、中須賀研(あるいは台灣)でゆっくりと相談させて頂く機会があると嬉しい。またの来台を心よりお待ちしています!
1月下旬に國立彰化師範大學で開催される中華民國物理學會年會(台湾・物理学会・年会)に申し込んだ。口頭(宣讀論文)とポスター発表(壁報論文)の両方で投稿した。小生にとっては、台湾国内学会のデビュー戦となる。
参加者一覧を見ると、 参加者(発表有無に関係なく)は1300人ほどいて、日本人は4名だけだ。台湾人の名前は、苗字が1文字で名前が2文字の合計3文字なので、漢字で名前を書くと(もちろん、3文字の日本人もいるが)日本人だとすぐにバレる。台灣で教授職を得ている多くのスタッフは、欧米で博士号をとっているので、みな流暢な英語を話す。国内学会といえど発表は全て英語である外国人の発表が多い宇宙・天文分野のセッションは少なくとも英語になるところが、日本の国内学会と大きく異なる。
さて台湾では、同じ教授職でも大學か大學でないかで職名が異なる。大學が母体でない研究所の所属だと、研究員=教授、副研究員=准教授、助研究員=助教 に相当する。だから、台湾の「研究員」を日本の「ポスドク」などと混同してはいけない。「研究員」は、立派なFacultyなのである。たとえば、中央研究院 (Academia Sinica) は、中華民国(台湾)の最高学術研究機関で、中華民国総統府に直属し、人文、科学の研究、人材育成を行なっている。中央研究院の天文及天文物理研究所(Institute of Astronomy and Astrophysics)は、台北市内の台灣大學構内にある。
それでは、台灣・國立中央大學に籍を置く小生の職名は?
助理研究學者。英語表記だと、Assistant Research Professor にあたる。
台灣・行政院國家科學委員會(National Science Council=NSC)に採用された研究者で、毎月の給料もNSCから出ているFacultyには、「研究學者」の称号が与えられる。小生の場合、Assistant Professor なので「助理」が付いて「助理研究學者」。いかにも学者らしい職名なので、天文学者にはぴったりだと思う。NSCは、日本でいうところの文部科学省とその外郭団体である日本学術振興会の科学研究費補助金(通称、科研費)のようなもので、競争的資金であるNSCに採用されること自体が立派な経歴になる。
小生の場合、幸運にも給料つきのNSCの研究費に申請して当ったので、昨夏に大學を退職した。たった、5ヶ月間しか働いていなかったが、僅かな退職金も支給された。現在は、給料も研究費も大學に依らないので、授業を行う義務は無く研究に専念できる。だから、Assistant Research Professor。もちろん、自分の部屋に閉じこもっている訳ではなく、セミナー・コロキウムや会議(海外とのTV会議を含む)に出席したり、學生の面倒をみたりはする。NSCには、半年おきに成果報告を行う義務がある。台灣の大學全般にも言えるのだが、学術論文などの出版物を定期的に出していかないと、食っていけない。逆に、インパクト・ファクターの高い論文誌に研究成果が認められると、ボーナスが出たりする論文至上主義である。ハワイの業務から帰ってきたばかりの小生も、さっそく大學の副学長に尻を叩かれて論文を書いている。
大學からはポストと立派な教授研究室(個室)を提供されている。大學の事務を通してNSCから給料が支払われるシステムなので(逆に大學や研究所にFaculty職を持っていないとNSCに申請できない)、小生の研究費の一部は、大學にピンハネされている。その分、優秀な秘書さん達が、お金をしっかりと管理してくれている。大学事務に軽くあしらわれている日本の教授職と違い、台湾での教育職は社会的身分も高く、(日本に比べて)明らかに一目おかれていると感じられる。
【Faculty (大学)】
- 教授 = 教授 (Professor)
- 副教授 = 准教授 (Associate Professor)
- 助理教授 = 助教 (Assistant Professor)
- 助理研究員 = 助教 (Assistant Research Fellow)
- 講師 = 講師 (Lecturer)
- 專案 *** = (Project appointed ***)
【Faculty (研究所)】
- 研究員 = 教授 (Research Scholar ~ Professor)
- 副研究員 = 准教授 (Associate Research Fellow ~ Associate Professor)
- 助研究員 = 助教 (Assistant Research Fellow ~ Assistant Professor)
【Faculty (NSC)】
- 正研究學者 = 教授 (Research Scholar ~ Professor)
- 副研究學者 = 准教授 (Associate Research Fellow ~ Associate Professor)
- 助理研究學者 = 助教 (Assistant Research Fellow ~ Assistant Professor)
【ポスドク】
- 博士後研究(員) = ポスドク (Postdoctoral Fellow)
【学生】
- 博士生(博士班) = 博士課程学生 (Ph.D. Student)
- 碩士生(碩士生一年級、碩士生二年級、碩士生三年級) = 修士課程学生 (Master Student)
- 研究生 = 研究生 (Graduate Student)
- 大學生 = 学部学生 (University Student)
【職員】
- 工程師(技工) = エンジニア (Technical Worker)
- 專任助理 = 職員 (Contract-based Assistant)
- 秘書 = 秘書 (Secretary)
- 助理 = アシスタント(Assistant)
再来週から國立中央大學の言語センターで開講される、中国語講座に申し込んだ。月曜から金曜まで毎日2時間、3ヶ月間の集中コースである。中国語(國語)での学会発表と、台湾の教授を目指して!?
2008年も師走に入った。ここ台湾でも、日本の初冬ぐらいの寒さを感じるのは、湿度が非常に高いからだという。それにしても、台湾人は、今からまるで日本の厳冬のような格好をしていて大袈裟過ぎる。先週などは、僕が半袖で外を歩いている側を、コートとマフラーに手袋姿の人達が行き来していて苦笑い。まあ、それでも朝晩はそれなりに冷えてきて、鍋や温泉が恋しい季節になった。僕の住んでいる桃園縣中歴市は風が強い日が多いので、余計に寒く感じる。中歴(Jhongli)は台北から35kmほど南西に位置し、大學校舎の屋上からは、桃園国際空港や大陸中国を睨むきな臭い台湾海峡が臨める。
僕のオフィスは、10階建ての校舎の南に面した最上階の個室で、とても眺めが良い(○○と煙と天文学者は高いところが好き)。透明度が高いと、台湾の中北部山系の1500-2000メートル級の稜線が南の水平線を賑わす。登山が趣味の僕は、部屋から双眼鏡で稜線を眺めるのが好きだ。暖かくなったら、登山&クライミングを再開したい。
さて近頃は、夕方の西の空が賑やかだ。明るい一番星と二番星。ひときわ明るいのは宵の明星「金星」で、−4等星。そして、二番星が木星で−2等星である。そして、昨日今日(12月1日と2日)は、三日月が更に華を添えた。
台湾、特に台北などの北部は、ぱっとしない天気が多いのだが、晴れた日には、校舎の屋上へあがってカメラを片手に夕日を楽しむのが、僕の楽しみである。同じように、カメラを片手に屋上で夕日を楽しむ物理学科の教授と会うこともある。今日は、ここ最近では最も透明度が高く、夕日を拝みに屋上へ上がると、顔見知りの教授に久々に再会できた。
面白かったのは、12月1日は三日月がちょうど笑顔の口になり、翌日は不機嫌な口元に一転した。見事な天体福笑いショーだった。今後、月は日に日に南の空へ移動して太ってくるが、金星と木星は暫くは夕方の空を彩る。仕事帰りにでも空を見上げみよう。2008年もラストスパート!
12月1日の笑顔の右目が金星、左目が木星。月面をよく見ると、欠けている暗い部分が薄らと肉眼でも見える。これは、「地球照(ちきゅうしょう)」といい、地球で反射した太陽光が月の影を照らす現象である。太陽からの離隔が小さい日没後や、日の出前の三日月で典型的に見られる。同じように、皆既月食で月が地球の影に入って完全に欠けた時には、地球大気中を乱反射した太陽光によって月が赤く浮かび上がるのも地球照である。
Nikon D40x + Fisheye Nikkor (10.5mm/F2.8) & Zoom Nikkor (18-70mm/F3.5-4.5)











